研究課題/領域番号 |
22K03415
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
原本 博史 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (40511324)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 擬似乱数 |
研究実績の概要 |
1. 128ビット程度のメモリ使用量を想定した64ビット出力の擬似乱数生成法のうち、並列計算環境に適した生成法の開発に取り組んだ。主たる方針は、ラグ付きフィボナッチ生成法やMultiple Recursive Generator(MRG)などの既存の生成法に非線形の出力変換を加えることで、現在のシミュレーション規模に耐えうる統計的品質を保証するという方針で設計を行った。昨年度までの結果ではいくらか良いパラメータになる候補を絞っていたが、生成法を固定した際、TestU01のBigCrushに合格するためにはやや低速な出力変換が必要になっていること、生成速度をJavaScriptなどの標準擬似乱数xorshift128+とその類型生成法、NumPyで採用されている生成法Permuted congruential generator(PCG)と同程度の生成速度を達成させるとBigCrushに含まれるいくつかの検定に棄却されやすくなることがわかった。 2. MRGのうち項数が少ない生成法について、符号理論に現れるMacWilliams恒等式を用いて特定のビットの0-1分布を正確に求める研究を行なった。これまで3項の場合についてハミング重みの小さい項による近似多項式によってカイ二乗ディスクレパンシーを近似したものを研究した結果、32ビット程度までは安全なサンプルサイズがほぼ4倍で増加することを数値的に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究以外の業務の影響で出張等が難しく、最新の情報入手が困難であった。また、計算機価格の高騰によって最低限の性能を持つ環境に変更して実験を行なったため、実験速度の低下から性能評価に必要なデータを収集するために想定以上の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、小メモリ空間用擬似乱数生成法の研究を進める。特にこれまでラグ付きフィボナッチ生成法やMultiple Recursive Generator(MRG)などの既存の生成法を基礎的な生成法に採用しているが、これをやや広げて線形合同法など古典的な生成法を検討することで、生成速度の一層の向上が可能かを検討する。 Xorshift系列の擬似乱数生成法評価ついては、ビット数を半分程度減らしたトイモデルに対する代数的・統計的評価を実施する。トイモデルの場合、周期の短さやパラメータの制約により棄却されやすい統計的検定を発見できる可能性がある。特にXorshift128+に対してどのような体系的に棄却できる検定手法を発見することで、他のXorshift系列を棄却しやすい検定法の発見につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機価格の高騰で、実験用計算機の性能を当初の計画よりも低いものに変更している。また、当初予定していた海外出張等が、研究以外の業務のため不可能となり残額が生じている。 今後は研究計画を修正し、計算機環境を可能な限り充実させる物品費、および出張用旅費として使用する予定である。
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