研究実績の概要 |
代表的な確率過程の一つに Wiener 過程 W(t) がある.ここで, t は時間を表す.統計的に独立な二つの Wiener 過程 W1(t) と W2(t) に関して,被積分関数が 1 である確率重積分を考える.そのような重積分は二つあって,その差を A で表す.この時,A と二つの Wiener 過程による単項式の期待値は一般にはわからない.それを与える公式を導出し,成果をまとめた論文が SIAM Journal on Numerical Analysis に掲載された. 課題番号 17K05369 の研究成果報告書において言及し,その後も取り組んでいた研究課題があった.それは,高次元の伊藤型確率微分方程式 (SDE) に対する陽的解法の研究である.その解法には,常微分方程式に対する Orthogonal-Runge-Kutta-Chebyshev 法が埋め込まれており,安定性に優れているだけでなく, 比較的大きな時間刻み幅で高い計算精度をもつ.我々は,確率偏微分方程式の空間離散近似によって生じる, 高次元の SDE にこの解法を適用し,比較的大きな時間刻み幅で, 精度の高い近似解を与えることを示した.これらの成果をまとめた論文が Journal of Scientific Computing に掲載された. 上で挙げた 2 つ論文誌は共に,数値解析の分野,あるいは,科学技術計算の分野における一流紙であり,そこに論文が掲載された意義は大きい.
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