研究課題/領域番号 |
22K03421
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
間田 潤 日本大学, 生産工学部, 教授 (80396853)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 数理医学 / 血管新生 / 内皮細胞 / 数理モデル / パターン形成 / 管腔形成 / データサイエンス |
研究実績の概要 |
血管網の形成は,怪我による治癒過程だけでなく,悪性新生物の増殖や転移に深くかかわっている。そこで,本研究では,実験から得られる細胞個々の運動に関するデータから,数理分野の理論と技術,特にクラスタリングなどの統計手法を用いて解析し,血管新生(既存の血管網から新しい血管が出現する形態形成過程である)において管腔が形成されるまでのメカニズムを明らかにする。 そこでまず本年度は,血管新生における内皮細胞のダイナミクスを2次元数理モデルで検討した。近年,血管新生時の伸長,分岐,細胞混合などの細胞運動を,内皮細胞間の単純な二体相互作用を仮定して再現する一次元離散力学モデルが提案されている。その2次元的な拡張を行ったのが今年度の成果であり,内皮細胞を,排除体積効果による反発的相互作用,仮足による引力的相互作用,接触による回転という2体相互作用を持つ楕円体として表現している点が特徴である。そして,今回提案した数理モデルによって,楕円の扁平率や接触回転の大きさが,形成される血管パターンの形状や枝の伸長に大きく影響を及ぼすことを示した。より現実的な数理モデルを提案できたことは,今後の血管網形成のメカニズム解明において大きな意義を持つと考える。 今後は,管腔形成を再現する数理モデルの提案のために,3次元への拡張を行うとともに,管腔形成のメカニズムを解明するために,管腔構造を作り出す内皮細胞の特性を実験結果の解析により明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験から考察された結果をもとに,引力および斥力の2体相互作用により構成した超離散モデルの連続系近似を利用して,網膜に見られる血管の結合が頻発する血管網形成の考察を行っており,実験では確認が難しい分岐角度によるパターン形成の比較を行うことができ,おおよそで揃っている分岐角度のメカニズムについて示唆することが出来たと考えている。しかしながら,所有するパソコンのスペックの問題で,1つの血管からの血管網形成しかシミュレーションが行えなかったことから,高性能のパソコンを導入し,複数の血管からの血管網形成を考察することで,より現実的な血管網形成の動態を検討する予定ではあったが,ノートパソコンの故障による購入計画の変更や,プログラムの改善(計算量の問題)などから成果を得られるまでの段階には至っていないのが現状である。 一方で,「研究実績の概要」にも記載したように,より現実的に2次元数理モデルを提案することができ,さらに管腔構造を形成するメカニズムの解明に向けた3次元数理モデルの検討にも進むことができており,立体的な血管網の形成過程について検討できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
提案した2次元数理モデルをもとに,3次元数理モデルの構築を行うとともに,実験の方からも管腔形成に関わる内皮細胞の運動データを蓄積してもらうことで,管腔構造を再現する数理モデルの検討を進めていく。 また,やや遅れている血管網のシミュレーションについては,プログラムの再検討を行うとともに,パソコンのスペックアップを行い,より現実に近い状況を再現したいと考える。 さらに,まだ数理モデルに取り入れることが出来ていない,実験結果から収集できる細胞数や細胞形状などの多数のパラメーターについて,クラスタリングや重回帰分析などを行うことにより細胞の新たな性質を見出し,その性質を数理モデルに取り込んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算量が膨大となる数値シミュレーションのため,高性能なデスクトップパソコンを購入予定であったが,所有するノートパソコンに不具合が生じたため,令和5年度に購入予定としていたノートパソコンを先に購入したため,差額分に当たる予算が残ってしまった。 令和5年度では繰り越しにより,当初予定の使用のほか,先に購入したノートパソコンに変えて,予定していたデスクトップパソコンのために使用する。
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