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2022 年度 実施状況報告書

Max-Plus方程式を用いた数理モデル構築のための手法の開発とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K03423
研究機関早稲田大学

研究代表者

高橋 大輔  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50188025)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワードmax-plus代数 / 粒子系 / ファジーセルオートマトン / 可解系 / セルオートマトン / 基本図 / max方程式 / 漸近挙動
研究実績の概要

本年度は、(1)可解なmax方程式の探索とその一般化、(2)max-plus多項式の分解の一意性、(3)粒子系の3次元基本図の解析、(4)ファジーセルオートマトンの漸近解の解析の4点について主に研究を行った。(1)については、解の複雑度が多項式オーダーになるものについて、空間依存性にパラメータを導入することにより、可解なmax方程式の一般化に成功した。また、常差分タイプのmax方程式に関する解析にも初めて取り組み、一定の成果の導出に成功した。(2)については、max-plus多項式の幾何的表現の凸包による分解を利用して、因数分解に相当する基本多項式の分解の一意性の証明に取り組んだ。分解の具体的なアルゴリズムについては我々は既に得ていたが、最終的な基本多項式のセットが分解の方法によらず一意的であるかについて、限定的な場合について解析を行い、証明に成功した。(3)については、1次元離散空間中を時間発展則によって移動する多粒子系について、運動量の空間平均の漸近挙動の解析について研究を行った。系の挙動を表す状態図として、密度-運動量平均の依存性を表す基本図と呼ばれるグラフが重要であるが、運動量平均の密度のみによる依存関係の一意性は、初期値により担保できない場合がある。そこで、粒子密度、および、それと独立な別の保存量によって運動量平均を表すと一意的な3次元グラフが導出できる場合について、グラフの厳密な導出に成功した。(4)については、セルオートマトンの時間発展則を多項式によって連続化したファジーセルオートマトンについて、時間無限大での解が一様解になるものについて解析した。従来は、空間サイトの状態値が加重平均になっているタイプの一般的証明が知られていたが、そのタイプに属さない、より難度が上がったタイプの時間発展則について、区間縮小の方法をうまく利用することで証明に初めて成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究の進捗状況は、当初の計画に従って順調に進行していると認識している。まず、本研究の最終目標は、研究課題に掲げたように、max-plus方程式を用いた数理モデル構築のための手法の開発とその応用であるが、そのためには、理論的基盤の構築が必須である。max-plus方程式については、主に可積分系・ソリトン系、離散幾何、量子系、最適化の諸分野を中心に発展してきたが、max-plus演算の数学的特徴により、それぞれの分野の特性に合わせた個別の理論構築をせざるを得ないのが実情である。そこで本研究では、対象とする分野の特性によらない、より包括的・一般的な理論の構築を目指して、max-plus系についての数学の基礎に踏み込んだ基盤構築が必要と考えている。本年度の研究では、従来には知られていなかった基礎理論の導出に成功しており、その意味で今後の本研究の発展を支えるための準備段階が順調に整ったと認識している。

今後の研究の推進方策

本研究は、最終的には、max-plus方程式の理論的基盤の形成と、それを応用した数理モデルの構築を目指している。このために、モデル形成のための対応力が高い新しい理論の開発を研究の全期間にわたって行うことを予定している。本年度に得られた成果は、その理論開発のスタートを構築するものであると認識しているが、まだ個々の具体的な系について新しい知見が得られたという段階であり、より一層の一般化・深化が期待される。そこで、次年度以降においては、本年度に取り上げたテーマの成果の一般化に取り組み、理論の完成を目指す。また、数理モデルのmax-plus演算による系の表現の一般性や多様性についても研究を今後すすめたい。我々は既に新しい数理モデル表現をmax-plus演算によって構築しつつあるが、特定の対象に限定されたものであり、汎用性のある手法と言えるには至っていない。そこで、数値計算による具体的な検証をしつつ、max-plus方程式をどういう対象にどのように用いれば良い数理モデルが得られるかという汎用手法の確立を目指す。

次年度使用額が生じた理由

本年度はまだ新型コロナの影響が大きく、出張を差し控えた部分がある。次年度には、成果公表、研究打合せにおいて本年度の余剰分も使用する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] ある4近傍ファジーセルオートマトンの漸近解とその基本図について2023

    • 著者名/発表者名
      金井 紗和、高橋 大輔
    • 雑誌名

      日本応用数理学会論文誌

      巻: 33 ページ: 1~10

    • DOI

      10.11540/jsiamt.33.1_1

  • [雑誌論文] ファジーセルオートマトンの漸近挙動の解析について2022

    • 著者名/発表者名
      山本 航、高橋 大輔
    • 雑誌名

      日本応用数理学会論文誌

      巻: 32 ページ: 61~74

    • DOI

      10.11540/jsiamt.32.2_61

  • [雑誌論文] Life-like セルオートマトンのMax-Plus方程式による拡張2022

    • 著者名/発表者名
      村岡 直樹、高橋 大輔
    • 雑誌名

      日本応用数理学会論文誌

      巻: 32 ページ: 123~132

    • DOI

      10.11540/jsiamt.32.3_123

  • [雑誌論文] Three-dimensional fundamental diagram of particle system of 5 neighbors with two conserved densities2022

    • 著者名/発表者名
      Endo Kazushige、Takahashi Daisuke
    • 雑誌名

      JSIAM Letters

      巻: 14 ページ: 80~83

    • DOI

      10.14495/jsiaml.14.80

  • [雑誌論文] Lattice equations and their solutions with complexity of polynomial class2022

    • 著者名/発表者名
      Kitagawa Soujun、Takahashi Daisuke
    • 雑誌名

      JSIAM Letters

      巻: 14 ページ: 5~8

    • DOI

      10.14495/jsiaml.14.5

  • [学会発表] max-plus多項式の分解の一意性について2023

    • 著者名/発表者名
      北川宗詢,高橋大輔
    • 学会等名
      日本応用数理学会第19回研究部会連合発表会
  • [学会発表] 可解なmax方程式の解について2023

    • 著者名/発表者名
      戸谷剛大,黒﨑健太郎,高橋大輔
    • 学会等名
      日本応用数理学会第19回研究部会連合発表会
  • [学会発表] あるファジーセルオートマトンの漸近解について2023

    • 著者名/発表者名
      山本航,高橋大輔
    • 学会等名
      日本応用数理学会第19回研究部会連合発表会
  • [学会発表] 粒子系の3次元基本図について2022

    • 著者名/発表者名
      高橋大輔,延東和茂,金井紗和
    • 学会等名
      研究集会「非線形波動から可積分系へ 2022」
  • [学会発表] Viewpoints brought by the box and ball system2022

    • 著者名/発表者名
      D.Takahashi
    • 学会等名
      国際会議「Box-Ball Systems from Integrable Systems and Probabilistic Perspectives」
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 個人行動履歴を用いた感染モデルについて2022

    • 著者名/発表者名
      南凛歩,高橋大輔
    • 学会等名
      日本応用数理学会2022年度年会

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公開日: 2023-12-25  

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