研究課題/領域番号 |
22K03430
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
瀬野 裕美 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (50221338)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 数理生物学 / 数理モデル / 感染症 / 集団応答 |
研究実績の概要 |
感染症の伝染ダイナミクスにおいては,感染症に関する情報の流布・普及により起こる集団内の個人の行動様式の同時的変化により,感染症伝染ダイナミクス(感染者,免疫獲得者,隔離者などの部分集団サイズ[個体数や密度など]の時空間変動の様相)が影響を受けるが,そのような個人の行動様式の変化は文化・社会的状況に強く依存する。本研究課題は,文化・社会的状況のような生物集団固有の特性に依存する成員の行動特性と集団全体の特性の連関により現れる集団応答の結果が導く感染症伝染ダイナミクスを理論的に議論するための数理モデルの構造について検討し,従来の数理モデルによる理論に新しい見方を提示することを目的とするものである。感染症の伝染ダイナミクス下にある集団における情報伝播による集団応答についての基礎的な数理モデリングに取り上げる要素として,集団を構成する個人の感染症に対する「関心」の広がりに着目する。感染症への関心の強さは,予防や療養の行動に影響を与え,その結果,集団内での感染症の伝染の起こりやすさに反映される。本研究課題の初年度では,基礎的な感染症伝染ダイナミクスモデルにそのような個人の行動様式における変化の影響を組み込んだ合理的な数理モデルを構築し,感染症の流行性,感染規模などについての数理モデル解析を行うことを目標とした。古典的な数理モデルに,集団内の個人の行動様式の変化の影響による感染症伝染ダイナミクスの質の変化を「合理的に」組み込んだ数理モデルを構築することが最重要課題である。特に,再感染可能な感染症の伝染ダイナミクスにおいて,あるヒト集団への外来の訪問者の受け入れがどのような影響を及ぼすのかを理論的に考察するための数理モデリングを検討し,構築した数理モデルについての解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の状況に対する社会的対応が進むことにより,オンラインによる学術交流の環境が以前に比べて整備されたこと,対面での研究・学術交流についての感染対策の普及により,研究を進展させるための学術ネットワークの活用がより至便になり,コロナ禍以前に近い研究活動を行えるようになった。一方,計算機環境を整えるための物品,書籍等の価格の上昇,航空運賃の(以前よりの)値上げなどは研究費の活用の上で不便をもたらす可能性が否めない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果を学術集会等で発信し,学術交流に活かすことにより,研究内容の深化を図るととともに,現在進行中の数理モデル解析を進め,新しい研究成果を得ることを当面の目標とする。さらに,ヒト集団における内部(社会)構造や社会応答による感染症伝染ダイナミクスの変質についての文献研究を進め,本研究における課題をより鋭利化したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続くコロナ禍により,特に海外で開催される国際会議への参加には困難が伴い,断念せざるを得なかったため,特に,予算として計上した旅費の使用ができなかったことが大きな理由である。令和5年度に入り,海外渡航における条件が(コロナ禍以前に戻っているわけではないが)緩和されており,海外で開催される国際会議への参加も今後は十分に可能になると期待される。また,国内での移動についての制限や条件についても同様であり,今後,適切な対面による学術交流を活用し,研究課題の遂行をより充実したものとするべく予算執行を進めたい。
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