研究課題/領域番号 |
22K03431
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
和田 達明 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (00240549)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 情報幾何 / 変形指数型分布 / エスコート分布 / 熱統計学 / 統計多様体 |
研究実績の概要 |
本研究は、熱統計学における変形指数型分布に関する物理現象の視点から情報幾何構造を再考し、変形指数型分布に付随するエスコート期待値に焦点をあてて、変形指数型分布の情報幾何構造を明らかにすることを主目的とする。 先行研究において平衡熱力学における状態変数およびエントロピなどの熱力学的ポテンシャル関数と情報幾何学における自然座標とポテンシャル関数との対応関係が既に明らかになっているので、本年度はこれらの対応関係に基づいて変形指数型分布に関する物理現象の特徴について研究を遂行した。 一般に物理現象を記述する上で、構成関係式は非常に重要である。良く知られている構成関係式は、例えば電気回路におけるオームの法則に代表されるように線形な関係式であるが、現実の物理現象を記述するには線形な構成関係式だけでは不十分である。そこで、非線型な構成関係式を構成関係式を変形関数を利用して構成する方法を研究し、具体的に変形指数型分布のひとつであるκ-変形指数関数とその逆関数であるκ-対数関数を利用して、従来の線型な構成関係式を非線型に拡張できることを示し、関連する研究成果をまとめ学術誌Entropyへ投稿して掲載された。 また、別の先行研究において幾何光学における光線の経路を記述するアイコナール方定式やハミルトン・ヤコビ方程式、および情報幾何学における勾配流方程式との間の対応関係を明らかにしたが、この結果を発展させた研究を行った。情報幾何における勾配流方程式と解析力学との関係を明確にし、統計多様体を記述する計量としてRanders-Finslere計量を用いた勾配流方程式の変形を示した(arXiv論文)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
比較的性質が良く分かっているq-変形指数型分布に付随するエスコート分布に関する2重双対平坦構造でさえも、その情報幾何構造が未だに明らかにできていないため。 また、コロナ禍のため国際会議や海外共同研究先へ出かけて直接議論を行うことが困難であったため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に見出した成果である「変形関数を利用した非線型構成関係式の構成法」を利用して、変形指数型分布に付随するエスコート分布とそれに関連する熱統学などの物理現象に基づき、2重双対平坦構造を調べていく。平行して、従来の指数型分布に対する勾配流方程式についての研究成果を、変形指数型分布に対して拡張することを試みる。 本研究課題は、変形指数型分布の熱力学・統計力学などの物理現象からみた情報幾何学構造を探る両分野に関わる研究であり、様々な関連する分野の専門家との議論が研究を遂行する上で非常に重要である。特に、これまでの研究を通じて国際共同研究を続けてきた、イタリアのトリノ工科大学のKaniadakis教授とScarfone博士は変形指数型確率分布の一つであるκ-指数型分布の提案者であり、変形指数型分布の統計力学などの物理現象に精通しており、彼らとの直接の議論を行うことで本研究の進展がおおいに期待できる。 2023年夏にギリシャで開催予定の、Kaniadakis教授とScarfone博士が主催するの統計力学に関する国際会議(ΣΦ2023)にて、研究成果を発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、夏に予定していたイタリアのトリノ工科大学での国際共同研究が中止となったため、残額が生じた。 今年度7月に開催されるギリシャでの国際会議ΣΦ2023への参加費用等に使用する予定である。
|