研究課題/領域番号 |
22K03444
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
森田 善久 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (10192783)
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研究分担者 |
村川 秀樹 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (40432116)
田中 吉太郎 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (80783977)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 反応拡散方程式系 / 保存則 / チューリング不安定性 / 定在パルス解 / 非局所効果 |
研究実績の概要 |
細胞の特徴的な性質の一つとして,細胞膜(membrane)が外部の物質を取り入れるときにひだ状に突起(ruffle)が生成され,膜上を動くことが知られている.この突起はアクチンが局在化することで生成される.この突起の生成とその運動メカニズムを説明するために提案された数理モデルの一つとして,Yochelis-Beta-Giv(2020)による反応拡散系がある.この方程式系の特徴として,重合した繊維状のアクチン(Polymerized actin filaments)を表す変数と単量体アクチン(actin monomers)を表す変数の和の積分量が保存され,重合アクチン生成を抑制するもう一つの変数を導入した3変数のモデル方程式系になっている.この積分量を調整することによって,パルス状の局在パターンの生成,パルス同士の衝突による消滅や反発運動が数値計算によって報告されている. 今回の研究では,定数解が拡散によって不安定化(チューリングタイプの不安定化)する条件を線形化安定性解析によって導き,また,空間的に局在化する定在パルス解の存在を示した.これらの成果は研究代表者の森田と分担者の田中の共著としてまとめ投稿中である. 一方,分担者の村川は,保存則をもつ細胞接着のモデル方程式系の研究を行い,数値計算のための離散化スキームの収束性についての数学的な結果を得ている. また,森田は,多数の枝状構造を持つ領域をグラフ形状に単純化した領域において,反応拡散方程式の解の漸近挙動を研究した.この研究は,今後保存則を持つモデル方程式系へと発展させる基盤となることが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも述べた保存量を持つモデル方程式系の局在化した構造を持つ定常解について,その存在を構成的に証明することができたのは大きな成果である.また,別なモデルではあるが,今後の研究に結びつくような数学的成果も得ており,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
局在パターンのダイナミクスについて,数値的,数学的にその力学系としての構造を明らかにすること,さらに他の類似の保存量を持つモデル方程式系についても適用できる理論を発展させることを目標として設定する. また,モデル方程式の解構造は,考える領域の幾何学的な性質に大きく依存している場合があり,単に多次元の領域にするだけでなく,複雑な形状を持つメトリックグラフ上でのモデル方程式の研究も新しい観点を与える研究と位置付け,領域の形状の解構造に与える影響を研究する. これらの研究の推進のため,集中的に打ち合わせする機会や,最新の成果の情報収集のために国内外の研究集会に参加して,講演者や参加者と意見交換する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年2月の末に,龍谷大学で研究打ち合わせ用に予定していた旅費が予想より安くなり,残額を別な用途に回そうとしてが,すでに予定が立っていたので,次年度に回して有効利用する方がより効果的な利用と判断した.6月に研究集会を企画しているので残額はそちらに回すことを計画している.
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