研究課題/領域番号 |
22K03446
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 浩二 九州大学, 理学研究院, 特任助教 (10711905)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | トポロジカル量子系 / 臨界現象 / 相転移 / 輸送現象 / 異常ホール効果 / 磁性ワイル半金属 |
研究実績の概要 |
並進対称性の破れた磁性ワイル半金属における伝導特性および相転移現象について研究を行った。本年度は特に、カゴメ層状強磁性ワイル半金属における異常ホール効果の解明を念頭に置き、磁気相図の研究や、数値シミュレーションに適したモデル構築と伝導特性の計算を行った。 カゴメ格子における磁気秩序を変化させた際の電子系のエネルギーを調べて磁気相図を作成し、論文を出版した。この成果はカゴメ層状物質の磁気的基本特性を示唆するものとして注目され、JPSJ Editors' Choice及びJPSJ Hot Topicsに選ばれた。 2次元量子ホール系におけるホール伝導度と縦伝導度の関係は普遍的な臨界特性として重要であることが知られているが、3次元ワイル半金属における関係は明らかにされていなかった。本研究では磁性ワイル半金属における異常ホール伝導度と縦伝導度の関係を数値的に調べ、普遍的性質の一端を明らかにした。その成果を国際会議LT29及び国際会議Localisation 2022において発表した。 トポロジカルディラック半金属に磁壁を持つ電極を接続した際のホール伝導制御の研究に関する進展をAPS March Meeting 2023において発表した。 カゴメ層状強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2の強束縛有効模型を構築し、パラメータをチューニングすることでバルク及び薄膜形状でのスピンホール伝導度、異常ホール伝導度の計算を行った。特にスピントルクの起源となる積層方向のスピンホール効果について詳しく調べ、その成果を日本物理学会2023年春季大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で明らかにした磁性ワイル半金属における異常ホール伝導度と縦伝導度の関係は、3次元ワイル半金属における臨界特性を知る上で基礎的かつ重要な手がかりになるものである。 数値シミュレーションに適したカゴメ層状強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2の模型を構築したことで、具体的な条件下での詳細な計算が可能になった。今後のさらなる進展が期待できる。 また、カゴメ格子における磁気相図の研究は高く評価されたが、層間の相互作用などを考慮することでさらに実用的な研究に発展させることが可能である。 一方、詳細な臨界特性の計算には時間が掛かると予想されるため、今後さらに効率的な研究手法の開発が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
新しく構築したカゴメ層状強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2の模型を用いて、試料中の磁気テクスチャ(構造磁壁)や電極磁化に対する依存性などを調べる予定である。 また、磁気スキルミオン構造など、より複雑な磁気秩序を持つ系における伝導特性の計算も行う計画である。 臨界特性の計算については、機械学習の方法を取り入れてさらに研究を加速する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はノートPCを購入する予定であったが、円安等の影響により本年度の予算残額では必要なスペックのものを購入できなくなったため、購入を見送った。次年度予算と合わせて購入する予定である。 次年度予算は、機械学習にも使用可能な高性能PCを購入するとともに、九州大学への研究打ち合わせ旅費として使用する計画である。
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