研究課題/領域番号 |
22K03449
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
原嶋 庸介 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (90748203)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属絶縁体転移 / 不純物 / 半導体 / Anderson局在 / 密度汎関数理論 |
研究実績の概要 |
本研究は半導体中の不純物濃度の変化により生じる金属絶縁体転移の臨界現象に対する理論研究である。特にexponent puzzleと呼ばれる、臨界指数に対して実験で提案されている2つの値について、そのメカニズムを明らかにするために、スピンの自由度を考慮した系と補償効果を考慮した系の解析を行う。本研究ではスピン自由度の効果と補償効果を取り入れるために、ドナー不純物およびアクセプタ不純物が3次元空間上で不規則に配置された系を考え、密度汎関数理論に基づき電子状態を求める。交換相関汎関数には局所密度近似を用いる。電子状態の局在性の評価にはmultifractal exponentを用いた。 2022年度はまずスピンを考慮した系の計算を実施した。臨界指数を求めるには大量のサンプルデータが必要になるが、結果としておよそ180,000組の不純物配置をランダムに生成し、電子状態のデータを取得した。これらのデータは不純物濃度が0.78x10^18 cm^-3から2.10x10^18 cm^-3の間で、複数の系のサイズについて取得されたものである。これを使って有限サイズスケーリングを行うための事前確認として、臨界点が確かに上記の濃度範囲に存在することを確かめるため、multifractal exponentのシステムサイズ依存性を調べた。その結果、不純物が高濃度に含まれる場合と低濃度な場合でサイズ依存性が逆になっており、上記の濃度範囲内に臨界点が存在することが確認できた。今後はこのデータに対して有限サイズスケーリング解析を行い、臨界指数を求める。 また、上記の不純物は完全にランダムな配置を取るが、半導体中の不純物の安定な配置についても考慮するために、実際の材料で不純物を添加した場合の不純物配置に対して系統的な解析を行い、その傾向を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
異動と異動先研究室の立ち上げ、そしてそれに伴う業務のため、予定していた有限サイズスケーリング解析を行うことができなかった。現在は研究室立ち上げ業務も落ち着き、人員も増えたので、今年度は予定通りに研究を進める。また、補償系でスピン自由度を考慮した計算を実施したところ、自己無撞着計算の収束性が非常に悪いことがわかった。補償系のデータを収集する前に、収束性を高めるための工夫を検討し、プログラムの修正が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、スピンを考慮した系で、すでに取得済みの電子状態データを使って有限サイズスケーリング解析を行い、臨界指数を求める。それと並行して、補償系のデータ収集も開始し、上記と同程度のデータの取得を行う。まずはスピン自由度の固定などの計算の収束方法について検討し、収束の安定性を向上させる。最終年度(2024年度)には補償系の臨界指数の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に購入予定であった計算機が、学内業務の都合上購入を延期したので、2023年度に購入予定である。またデータ収集のための計算を加速させるために、共同利用計算機の使用量を事前の想定より増やして契約する予定である。
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