研究課題/領域番号 |
22K03471
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
田原 周太 琉球大学, 理学部, 准教授 (80468959)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超イオン導電体 / 分子動力学シミュレーション / トポロジカル解析 |
研究実績の概要 |
昨年度はAgイオン導電体であるAgIとRbAg4I5の構造について研究をおこなった。 AgIのα相に対して、通常の剛体イオンモデル(RIM)と分極可能イオンモデル(PIM)の2つの理論モデルを用いた分子動力学(MD)シミュレーションを実行し、得られたイオン分布に対してパーシステントホモロジー解析を行った。その結果、RIMではアニオンのパーシステント図(PD)に比べてカチオンのPDの分布が広がっており、カチオンが多様な配置をとっていることがわかった。また、PIMの導入によって、アニオンの分布はほとんど変わらない一方、カチオンの分布は大きく変化していることがわかった。特にb = 1.8, d = 2.7付近に小さなピークを形成していることが特徴的で、この小さなピークを逆解析すると10個程度のAgイオンが連なった、比較的大きく特徴的なリング状の分布を形成しており、Agイオンの速い拡散に関係していることが示唆される。 溶融RbAg4I5のトポロジカル解析を行う前段階として、第一原理(FP)MDシミュレーションによって構造モデルを構築することを試みた結果、これまでの研究で得られていた古典MDシミュレーションの結果に比べて実験データの再現性が高い構造モデルを得ることに成功した。特に、液体中の短距離秩序の情報が多く含まれる、高い波数領域の再現性が向上していることが分かった。このことは、今回のFPMDの結果が古典MDと比べて短距離秩序を良く再現している事を示唆しており、実際に二体分布関数を比較してみたところ、やはり実験データを良く再現していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算申請したときに想定していた物質とは異なる物質に研究対象を変えたが、超イオン導電体のイオン伝導メカニズムを研究する目的と進捗具合は当初予定していたものと変わらないため。
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今後の研究の推進方策 |
溶融RbAg4I5について第一原理MDシミュレーションから精度の良い構造モデルが構築でき、溶融AgIについても第一原理MDシミュレーションが最近終了したため、これら2つの物質を比較するデータ解析を行うことで、Agイオンにとって拡散しやすい周囲環境がどのようなものか調べていきたい。
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