研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、これまで主に半導体等に光照射を行うことによって生成される過渡的な粒子であると考えられてきた励起子が、「励起子絶縁体」と呼ばれる物質内においては、自発的に生成される(定常励起子)という近年の発見に基づき、それら定常励起子の性質を明らかにするとともに、物質設計の観点からその性質の制御を行うことである。昨年度における研究では、励起子絶縁体の元素比および温度の制御を用いて、定常励起子制御の根幹となる電子と正孔の結合力の変化を確認することに成功した。これらの結果に基づき本年度においては、外部電場による励起子制御を行うために適した電気陰性度の極めて高い分子(アクセプター分子)、および電気陰性度の極めて低い原子(ドナー原子)の選定を行い、F6-TCNNQ (2,2′-(Hexafluoronaphthalene-2,6-diylidene)dimalononitrile) 分子とCsの原子を用いることを決定し、これらの物質を1分子膜・原子膜の精度を持って蒸着可能な蒸着機構の作成および実験装置への組み込みを行った。これらの蒸着機構は本年度中において実験に利用可能な状態に活性化しており、またARPES測定を行う超高真空チャンバーへ真空を破らず輸送可能な状態でのセットアップが完成した。 また、昨年度において取得済みの実験データの解析をほぼ終了し、前述の元素比および温度変化による定常励起子制御の成果の論文執筆を開始している。
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