研究課題/領域番号 |
22K03551
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松原 弘樹 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (00372748)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ピッカリングエマルション / 臨界溶解濡れ / 界面張力 / 解乳化 / 乳化状態の制御 |
研究実績の概要 |
本研究は、2,6-ルチジンを内液相(L)、シリカ粒子水分散液を外液相(W)とする粒子被覆エマルション(ピッカリングエマルション)を研究対象とし、L 相とW 相の下部臨界溶解点の近傍では液液(LW)界面張力とLW界面でのシリカ粒子の接触角が臨界指数を用いて表せることを利用して、界面張力と接触角の関数としてPEの液滴サイズと安定性がどのように変化するかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、これまで進めてきたシリカ粒子(直径100nm)を用いて調整したピッカリングエマルションの下部臨界溶解点近傍での物性と液液界面張力の相関に関する実験データの理論解析を進め、関連課題を含め、原著論文4報、日本語論文1報を発表した。また、国際会議では1件の招待講演を含む、3件の口頭発表を行い、国内学会でも2件の発表を行った。 ピッカリングエマルションの乳化安定性試験の特に重要な結果としては、申請書で当初予想した通り、(1)液液界面張力が大きくなるにつれて連続的にピッカリングエマルションの合一速度が遅くなり、界面張力の値とピッカリングエマルションの経時安定性には明確な相関があること、(2)ピッカリングエマルションを臨界溶解点に向かって連続的に降温する条件では、界面張力の急激な低下に伴う、ピッカリングエマルションの自発的な解乳化を誘起できることを初めて実験と理論を対応させて明らかにできたことである。 また、それぞれの温度で調整したピッカリングエマルションの平均粒径にも有意な差が観察され、界面張力を利用した粒径制御にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要、また、昨年度の報告書でも述べた通り、2,6-ルチジンを内液相、シリカ粒子水分散液を外液相とするピッカリングエマルション、および、シクロヘキサンを内液相、メタノールのシリカ分散液を外液相とするピッカリングエマルションについて、概ね、申請当初に想定していた通りの研究成果を得ることができ、2年間で原著論文4報、日本語論文2報を発表している。また、学会発表も国際会議で3件の招待講演を含む5件の発表を、国内学会でも2件の招待講演を含む6件の発表を行うことができた。 以上の理由により、本研究は当初の計画以上に順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況の項目で述べた通り、本課題は当初の予定を超えて順調に進展している状況である。したがって、研究最終年度は、これまでの研究データを総括しながら、界面張力を駆動力としてピッカリングエマルションの物性を制御する申請者独自の着想を更に発展できる課題にも積極的に取り組んでいきたいと考えている。具体的には、油水界面で2次元固体状の吸着膜を形成することで界面張力が強い温度変化を示す界面活性剤(例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウムとヘキサデカノールの混合吸着膜や、一部のフルオロカーボン系高級アルコールなど)を用い、界面張力の変化に連動したピッカリングエマルションの解乳化は可能か、乳化粒子のサイズ等の物性制御は可能か、シリカ粒子以外にピッカリングエマルションの調製に広く使用されている様々な微粒子を使っても同様の成果を得ることが可能か、などの基本的かつ、重要な課題について研究を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、関連する研究課題で3件の民間助成金を獲得することができ、その結果、科研費での消耗品などの支出を大きく抑制することができた。民間助成金の獲得により、研究の進行状況の項目にも記した通り、本課題は予定より早く進行することができており、したがって、繰り越した研究費に関しては、こちらも次年度の研究計画の項目に記した通り、界面張力を使ったピッカリングエマルションの物性制御の研究を更に発展させる課題のために有効に使用したいと考えている。具体的には、研究の申請段階では使用予定ではなかった各種の界面活性剤を用いた試行実験(塩化セチルトリメチルアンモニウム、ヘキサデカノール、フッ素系高級アルコールなど)に加え、ピッカリングエマルションの調製に広く用いられているシリカ粒子以外の各種ナノ粒子(カーボンブラック、酸化チタンなど)などを用い、本研究課題で申請者が提案しているピッカリングエマルションの物性制御の拡張性、汎用性を強く主張できるような研究を展開したいと考えている。
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