研究課題
本研究の目的は、トカマク型核融合炉の性能向上を目指して、高周波によるトカマクプラズマの非誘導電流駆動を定量的に理解し、中心ソレノイドを用いないト カマク運転手法を確立することである。昨年度は新オフミッドプレーン入射低域混成波アンテナにより高速電子損失が低減されることが確認された。本年度は、オフミッドプレーン入射アンテナ駆動プラズマの特性をより定量的に調べるため、詳細な分布データを取得した。さらに、プラズマ電流値を合わせた外側赤道面入射と上側入射アンテナ駆動プラズマを調整し、同様に分布データを取得した。高速電子電流を取り入れた拡張MHDにもとづく平衡解析を行ったところ、高速電子電流の割合がオフミッドプレーン入射で大きくなることがわかった。これは、高速電子の閉じ込めが改善した効果と考えられる。波動による電流駆動計算から得られたプラズマ電流値は、実験で観測された電流値の2-3割以内であり、精度の良い予測が可能であることが確かめられた。また、波動の吸収特性を、入射電力変調を行うことで調べたところ、特に赤道面入射で強いイオン加熱が観測された。低域混成波は線形には電子に吸収されることが期待されるが、非線形には、パラメトリック崩壊不安定性によりイオンに吸収される。赤道面入射は線形吸収がもっとも弱いシナリオであるが、実験的にも線形吸収が弱いことが示唆された。ただし、総イオン加熱電力は入射電力の1割以下であり、全体の電子加熱・電流駆動に対する影響は大きくないと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
オフミッドプレーン入射アンテナ駆動によるプラズマ生成の特性を詳細に調べ、定量的にも妥当な解釈を与えられることがわかった。また、今後のアンテナ改造のための指針も得られたので、研究は順調に進展していると言える。
現在入射電力はアンテナのフィーダー近くの構造の耐電圧で決まっており、プラズマとの相互作用によって耐電圧が低下している。また、プラズマへの低域混成波の結合も若干弱めなので、アンテナの治具とリミターの改造を行う。これにより入射電力を大幅に上げることができ、より高性能なプラズマを生成できると考えられる。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
AIP Conference Proceedings
巻: 2984 ページ: 090001
10.1063/5.0162483
巻: 2984 ページ: 090002
10.1063/5.0162498
Nuclear Fusion
巻: 63 ページ: 126015~126015
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