研究課題
本年度はQUESTにおいては実験を実施せず、基盤となる測定器の改良と測定回路・解析の最適化を実施した。実験が行われなかった理由は、対象となるプラズマの生成に必要な8.2GHz発振器の一つが故障したためである。今後研究対象となるトカマクプラズマについて、残りの8.2GHzクライストロン発振器によるトカマク生成を目指しつつ、8.56GHzクライストロンや28GHzジャイロトロン発振器で生成されたトカマクプラズマも対象とすることを検討している。測定器の改良については、一部の熱電対を除去し、代替として冷却水流量計と水温計を設置し除熱量の測定に置き換えた。この改良によって、測定器の導入によるプラズマ生成真空容器内部の真空度が悪化を低減させ、将来的にマシンタイムを増やし豊富な実験データ取得が可能となる展望が得られた。測定回路・解析の最適化については、スクレイプオフ層とプラズマパラメータの近いPANTA装置において,高速電圧掃引静電プローブ法を応用した研究を実施した。この研究は発光揺動トモグラフィー計測と静電プローブ計測のデータを比較するものであるが、回路や解析の調整を行った結果両計測で類似した電子温度揺動波形が得られたことから、間接的に高速電圧掃引法の適用範囲を検証でき、高次スペクトル解析適用の展望が得られた。研究成果発表の実績としては、上記静電プローブとトモグラフィー計測の比較実験の成果をまとめJournal of the Physical Society of Japanに出版された。
2: おおむね順調に進展している
2022年度は、主に測定器本体(バイアス電極)の改良と、高速電圧掃引シングルプローブ測定回路と解析手法の最適化を行った。その一方、定常プラズマを生成するために必要な高周波発振器の一部故障のため、トカマクを対象とした実験は実施されなかった。バイアス電極の改良点としては、一部の熱電対を除去することによってアウトガスを低減させた。これまでは、バイアス電極とプラズマ真空容器の間のゲートバルブを開放したときに真空度がわずかに悪化し常時計測ができずマシンタイムが限られていたが、この改良により実質的にマシンタイムが増加できる見込みとなった。一方熱電対の代替として冷却水流量計と冷却水水温計の整備により、プローブに流入する熱量の絶対値計測が可能となった。測定回路と解析手法の最適化としては、直線プラズマ装置PANTAにおいて高速電圧掃引法を用いた研究を進めて論文化した。この研究は発光揺動トモグラフィー計測と静電プローブ計測のデータを比較するものであるが、回路や解析の調整を行った結果両計測で類似した電子温度揺動波形が得られた。波形の保存は、異なる周波数成分間の位相角を検証する上で重要であり、間接的に高速電圧掃引法が倍スペクトルのような高次スペクトル解析にも適用できる展望が得られた。
2023年度は、QUESTの幅広い運転領域においては実験を実施する予定である。夏季と冬季に専用のマシンタイムが予定されている。前年度のアウトガス対策によって、専用のマシンタイム以外の放電時間でも可能な限りのデータ取得する予定である。
2022年度にQUEST装置で実験ができず一部の物品の仕様を確定できなかったこと、半導体不足で納品の見通しの立たない物品が存在したことにより、研究を進めつつ一部の研究資金を次年度使用することとした。2023年度は実験の見通しが立っており、年2期の実験のうち前半部の実験の結果を踏まえて物品の仕様を選定し、物品購入に当てる予定である。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 92 ページ: 033501(page1-4)
10.7566/JPSJ.92.033501
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K004384/index.html