研究課題/領域番号 |
22K03607
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
山縣 淳子 京都産業大学, 理学部, 教授 (90548215)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | エキゾチック原子核 / 中間子 / 強い相互作用 / 量子色力学 |
研究実績の概要 |
本研究は、反K中間子ー原子核間に発現する強い相互作用の解明に向けて、最新の実験結果の理論的解釈を試みるものである。特に、「J-PARC E05実験で得られた反K中間子ー原子核ポテンシャルとE15実験におけるK-pp束縛状態の性質は無矛盾か」「J-PARC E05実験で見えている深い束縛エネルギー領域におけるevent excessは何か」といった問題に回答することを目的とする。これらを通じて、反K中間子ー原子核ポテンシャルの微視的導出や、event excessがK中間子原子核とは違う状態であることの証明を試み、K中間子原子核及びそれを生み出す反K中間子ー原子核間の強い相互作用を理解することを目指す。 今年度は、J-PARC E31実験に関連して、反K中間子と重陽子の反応によるΛ(1405)粒子の生成について理論計算を行なった。Λ(1405)粒子は、反K中間子と核子が強い引力によって束縛した状態と期待されており、反K中間子ー原子核ポテンシャルの理解において鍵となる粒子である。J-PARC E31実験で得られた結果と理論計算を比較したところ、(1)断面積の絶対値の違いと(2)Λ(1405)粒子の寄与と準自由な反K中間子の寄与の相対的な大きさの違い、が見られた。J-PARC E31実験における反応過程は、J-PARC E05実験やE15実験のものと相補的であり、今後の反応計算に活かせると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、今年度は反K中間子ー原子核間ポテンシャルの微視的理解として、虚部の一部である2核子吸収の寄与を計算する予定だった。しかし、実験グループとの議論を踏まえて、より喫緊性があり、反K中間子ー原子核間ポテンシャルの実部と関連のあるΛ(1405)粒子の生成について研究を行なった。予定していた内容に対してはやや遅れていると言わざるを得ないが、違う視点から反K中間子ー原子核間ポテンシャルに対しての理解は進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、まず今年度行う予定であった、2核子吸収の寄与を計算する。また、反K中間子ー原子核間ポテンシャルを微視的なアプローチで計算し、その実部と虚部の性質を議論する。
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