研究課題/領域番号 |
22K03617
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久徳 浩太郎 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30757125)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 重力波 / 相対論 / 中性子星 / ブラックホール |
研究実績の概要 |
昨年度に実装した一般化区分的ポリトロープ状態方程式を用いてQCDクロスオーバーを模倣し、様々な解像度で連星中性子星の合体計算を行い、計算結果および収束性を従来のポリトロープ状態方程式と比較した。音速が不連続になるという従来型ポリトロープの欠点を一般化区分的ポリトロープは克服しており、QCDクロスオーバーのより妥当な科学計算を可能にすると同時に、数値流体計算で本質的に重要な音速が連続になることで収束性の改善も期待される。科学的成果という観点では、連星合体過程や放射される重力波は二つの状態方程式モデルの間で定性的には違いがなく、今までに従来型ポリトロープで行われた計算も音速の不連続によって大きな悪影響を被ってはいないことを確認できた。一方、昨年度の予備的検討よりも幅広い解像度で複数のモデルを計算した結果、区分的ポリトロープで得られた結果は系統的に滑らかな収束性を示す、具体的には諸量の解像度への依存性が冪乗でよく表されることを見出しつつある。連星合体計算においては流体や重力の非線形性が複雑に絡み合うため、収束性が不規則になりやすく連続極限への補外に困難を伴う。その点、収束が滑らかであれば連続極限を得ることが容易になるため、将来的な高精度の重力波波形計算に向けて区分的ポリトロープが有益であろうと結論できる。これらの結果は現在論文にまとめており、近く公開・投稿する予定である。さらにQCDクロスオーバーの有無を重力波観測から判別するための研究も進め、現実的に起こりうる距離の連星合体でも将来検出器であれば可能性があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般化区分的ポリトロープ状態方程式を用いた科学計算に進み、有意義な形で従来のポリトロープ状態方程式と収束性を比較できたため。
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今後の研究の推進方策 |
HLLC法の有用性を改めて検討しつつ、実装を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界情勢や為替事情により、大規模な発注に望ましい機会が少なかったため。今年度は所属機関を異動し、計算機環境も少なからず再構築を余儀なくされるため、計算データの保存を念頭に環境を整備する。
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