研究課題/領域番号 |
22K03640
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
千葉 剛 日本大学, 文理学部, 教授 (40324602)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 重力理論 |
研究実績の概要 |
弱い等価原理(自己重力の無視できる物体の自由落下運動の普遍性)により、時空には局所的に慣性系をとれ、重力は大域的に曲がった時空として実現されることになる。このように等価原理は物質と計量の結合の仕方を規定する。しかしながら、近年の宇宙の加速膨張の発見にともなう宇宙項問題にみられるように、真空のエネルギーも含めて物質と計量が universal に結合しているか疑念が生じてきている。実際、量子重力理論として有望な超弦理論で現れるディラトンと呼ばれるスカラー場は、弱い等価原理が破れる可能性が指摘されている。そこで、弱い等価原理がどこまで正しいのか・どこかで破れている兆候はないのかを、あらゆる手段・方法で解き明かそうとするのが本研究である。令和5年度は前年度に引き続き量子論における等価原理の定式化を行った。 近年、外場の擾乱に対する安定性やQEDの効果を増大される目的で、大きな電荷をもった量子時計が提案され実際に構築されている。そこで、前年度に導出した、弱重力場における量子固有時間の定式化に基づき、電磁相互作用のある場合における荷電した量子時計の時間の遅れを考察し、量子固有時間の遅れの一般公式を導出した。さらに、この公式を一様磁場中における重ね合わせ状態へ応用し、量子干渉効果が観測可能であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
弱重力場中における量子場に対する弱い等価原理の定式化については、当初の想定を超えて特定の量子状態によらない表式を得ることに成功し、また荷電した量子時計にも拡張した表式を得ることに成功した。その一方で、弱い等価原理の観測的制限に関する研究はあまり進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より現実的な実験設定(例えばPenning trap された荷電粒子)に対して固有時間の遅れを具体的に評価し、実験的な検証への具体的な提言を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の繰越額が多かったことによる。令和5年度自体の支出額としては当初予算を上回っている。翌年度は研究会等に参加し研究情報の取得や研究成果報告に努めたい。
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