研究課題/領域番号 |
22K03656
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
里 嘉典 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (30342603)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ビーム強度モニタ / 非接触測定 / 遅い取り出しビーム |
研究実績の概要 |
大強度陽子加速器(J-PARC)、主リングで30GeVに加速された陽子ビームは、遅い取り出し法を用いて5.3秒周期のうち約2秒間、疑似的な直流ビームとしてハドロン実験施設に取り出されている。遅い取り出しビームのビーム強度を増強していく上で、2秒間の取り出しビームの時間変動の一様性を改善することは大強度ビームの利点を最大限に生かすために重要である。本研究では、非接触で陽子ビームの強度の時間変動を1 ms以下の時間分解能で常時測定することができるビームデューティ測定モニタを開発し、大強度陽子ビームの品質向上に必要な信頼性の高い指標を常時提供することが目的である。 本研究では、1 Pa 程度の残留ガス中を陽子ビームが通過する際に発生する電離電子を電場と磁場を用いて薄型のシンチレータへ衝突させ、発生したシンチレーション光を光ファイバーによって誘導し、光電子増倍管で増幅することによりビーム強度の変動を高速に検知できるビーム強度モニタを開発する。 本研究で重要な点として、陽子ビームから約5 cm の距離にシンチレータを設置するため、陽子ビームに同期してして飛んでくるバックグラウンド粒子(ミューオン等)によって信号対バックグラウンド比率が影響される。この影響を評価するため、今年度はビームライントンネル内に薄型シンチレータおよび光電子増倍管を設置するためのテストジグを製作した。薄型シンチレータ、光ファイバを調達し、入荷後にテストジグの設計・製作を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、薄型シンチレータ、光電子増倍管、光ファイバの調達を行った。コロナ禍のため、当初の見込みよりも納品が長引いたが、昨年度後半に部品の入手が完了した。部品を組み込んだテストジグを組み立て、ベータ線源による評価を行っている。 今年度は、ビームから約10cm 離れた位置に設置する薄型シンチレータへのバックグラウンドの影響を調べるため、薄型シンチレータ、非軸放物面レンズ、光ファイバーを調達した。これらをビームライントンネル内に設置するためのジグを設計・製作した。本研究では、ハドロン実験施設内の一次陽子ビームラインに設置されている残留ガスビーム強度モニタの内部電極を改造する計画である。2023年の2月から開始された8GeV陽子ビーム取り出しにおいて、ビームライン上流に新たに設置した2台目の残留ガスビーム強度モニタが正常に動作し、ビーム運転に使用できることが確認できた。これにより、既設の残留ガスビーム強度モニタを本研究の研究開発用に転用できることになった。
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今後の研究の推進方策 |
J-PARCハドロン実験施設のビームタイムに合わせてスイッチヤードトンネル内にバックグラウンド評価のための薄型シンチレータとテストジグを設置し、30GeV陽子ビーム運転時においてビームに同期したバックグラウンドの影響を調査する。並行して既設のビーム強度モニタの内部電極を改造を行い、薄型シンチレータを組み込んだ状態において遅い取り出しビームの強度変動を測定し、デューティー比(ビーム強度の一様性)の評価を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度に購入する予定であった石英光ファイバの仕様を変更し、結果として購入金額が当初見込みよりも少なくなったため。また、非軸放物面ミラーについても、当初見込みよりも購入金額が少なくて済んだため。
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