研究課題/領域番号 |
22K03672
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高田 将郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20334245)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 星震学 / 恒星自転 |
研究実績の概要 |
本研究では、恒星内部で角運動量がどのように輸送されるかという大きな問題について、星震学の手法に基づいて新たな知見を得ることを目指している。特に、近年非常に高精度の観測データが得られるようになった、かじき座ガンマ型脈動変光星に着目し、その内部の自転構造を明らかにするという課題に取り組んでいる。2022年度の進展は、これらの星でごく最近明らかになったユニークな特徴を持つ固有振動モードを理論的に詳細に解析したことである。このモードは、中心対流層とその外側にある輻射層の両方に振幅を持つが、中心では慣性波(対流運動がコリオリ力で変化したもの)、外層では慣性重力波(内部重力波がやはりコリオリ力で変質したもの)で構成される。伝播領域も物理的な性質も異なる2種類の波動で構成されるということで、このモード自体が興味を引く対象であるが、さらに考えを進めると、このモードの性質を詳しく調べることで、星の中心から外層までの広い範囲の構造を探ることができるという展望が開ける。加えて、今回の研究で明らかになったことは、このモードの周波数分布を詳細に調べることで、対流核と輻射外層の境界領域の構造について情報が得られるということである。従来この境界付近の構造は、対流や拡散といった物理過程に敏感に依存し、理論的に決めるのが困難であった。この問題は、星の年齢や化学進化に影響する重要なものである。今回星震学の手法を用いることで、この境界領域の問題に迫る新たなアプローチが確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同時並行で進めている他の研究課題に予定以上に時間が掛かったことが影響し、当初予定していた課題への取り組みが遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、慣性波と慣性重力波で構成されるモードの解析をさらに発展させること、および当初計画していた、かじき座ガンマ型星の内部微分回転を測定する手法の開発を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究結果を発表するための研究会に参加したが、幸運にも他の財源を利用することができたため、本研究の予算は使用せずに済んだ。次年度は、論文投稿料や研究打ち合わせ、研究会参加への旅費等に使用する予定である。
|