研究課題/領域番号 |
22K03678
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
北本 俊二 立教大学, 理学部, 教授 (70177872)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | X線連星系 / ブラックホール / 中性子星 / モニター観測 |
研究実績の概要 |
X線天体、特にブラックホールや中性子星を含む連星系は、X線強度やエネルギースペクトルが様々な時間尺度で変化することが知られている。この強度やエネルギースペクトル、また、それらの変化の時間スケールや因果関係を引き出すことは、これらの天体のX線放射の主役である降着円盤の物理を知る上で重要である。 本研究に必要な、長期にわたるモニターデータは、古くはVela5B, Ariel5/ASMから、現在も稼働中であるMAXIやSWIFT/BATまで、ギャップはあるものの、ほぼ半世紀にわたり蓄積されており、NASAやJAXAのアーカイブとして利用可能である。 Ginga衛星搭載の全天監視装置(Ginga/ASM)は、1987年から1991年の間、全天のモニター観測を続けた。この間、他にモニター観測している衛星が存在せず、Ginga/ASMのデータは世界で唯一のデータである。Ginga/ASMのデータは、データベースとしてJAXAから公開されているが、これは、決められた天体の既に作成されたデータのみであり、その他の天体の活動を振り返ることができない。新たに発見されたX線新星等、データベースに無い天体のかつての活動の有無を知るためには、Ginga/ASM のデータを再解析する必要がある。そこで、X線源の長期変動の研究をスタートさせる第1段階として、Ginga/ASMのテレ メトリデータに立ち戻り、興味ある天体の座標を指定することで、Ginga/ASM が観測中の活動を調査できる解析ツールとして、光度曲線を導出するソフトウエアを開発した。しかし、2022年度末時点での開発中のソフトウエアは機能不足の理由で活用できていないデータが残ってしまっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、初年度に、Ginga/ASMのテレメトリデータに立ち戻り、興味ある天体の座標を指定することで、Ginga/ASM が観測中の活動を調査できる解析ツールとして、光度曲線を導出するソフトウエアを開発する予定であった。実績として、本ソフトウエアは稼働させることができ、既知のX線源の光度曲線を導出した。また、座標入力機能も備えておりカタログに無いX線源の解析も可能となった。しかし、現時点のソフトウエアでは、一部データで天体の誤認識が現れるバグが残っている。そのため、複数のデータで満足な結果が得られていない。2022年度はデータの選別を行うことで対処したが、データの有効利用のためにも、また結果の信頼性のためにも、ソフトウエアの改良が必須である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初目標は、(1)使えるデータータベースから、ブラックホール候補星として代表格である GX339-4 と Cyg X-1 の半世紀にわたる光度曲線の作成 、(2)作成した光度曲線から、統一的な表示方法に変換する方法の確立 、(3)複数(10天体以上を目指す)のブラックホール候補星で、統一的表示 、(4)状態の分類を検討、 である。現在(1)の光度曲線は、とりあえず出力結果は出せるが、データの有効利用と信頼性の定量化に不足がある。そこで、もうすこし、現ソフトウエアの衛星姿勢と衛星軌道データの扱いを見直し、可能な範囲で改良しデータ有効利用を目指す。そして、強度がほぼ一定であるカニ星雲の光度曲線から信頼性を定量化する。その後、GX339-4 と Cyg X-1の光度曲線の改版を行う。そして、(2)の統一的な表示方法に変換する方法を確立させ、学会発表に繋げたい。それができたら、(3)、(4)の課題に着手し、複数(10天体以上を目指す)のブラックホール候補星で、統一的表示をおこない、状態分類の検討をおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度末において、消耗品等の購入に余裕ができていたため、未使用額が生じた。2023年度は学会発表のための旅費と参加費、消耗品(特に計算機周辺機器関係)に使用する予定である。
|