研究課題/領域番号 |
22K03679
|
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
家 正則 国立天文台, TMTプロジェクト, 名誉教授 (30111446)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 円盤銀河 / 渦状構造 / 空間分布 / 対称性の破れ / モデルシミュレーション |
研究実績の概要 |
近年の大規模銀河画像データベースの公開により、銀河分布を統計的に解析することができるようになってきた。赤方偏移1の時代の銀河分布の観測と赤方偏移1000の時代の宇宙背景放射の観測をつなぐ研究からは宇宙の構造と進化についてΛCDMモデルという標準的なモデルでほぼ主な観測結果を説明できることが明らかになってきた。これらは宇宙のエネルギー密度というスカラー量の詳細な観測がもたらせた知見である。スカラー量の次に重要な情報を持つベクトル量としては銀河の自転ベクトルなどに代表される運動学的情報がある。特に渦巻銀河の構造は銀河の自転ベクトルの視線方向成分の符号について明瞭な情報を与えてくれる。研究代表者は、このことに着目した解析を大規模に行うことで、観測的宇宙論に新たな制限を加えることを目標に本研究を進めている。 2022年度末までに、全天の7割をカバーするPanSTARRSの銀河画像ライブラリから約30万件の画像を抽出し、研究代表者および共同研究者2名による、渦巻銀河の渦巻方向がS型であるかZ型であるかの判定を行い、約14万個の銀河についての判定結果をカタログにとりまとめている。この解析法とカタログの説明、および簡単な統計的解析結果は12月の京都大学での国際研究会や1月の国内研究会で口頭発表済みであり、論文投稿とカタログ公開にむけて準備を整えている段階である。 現在、S/Z判定に加えて、すべての銀河の軸比と方位角の再測定をすすめており、これらの結果を反映した銀河の自転ベクトルカタログを完成させて2023年中に投稿する予定である。 また、すばる望遠鏡のHSCによる高感度広視野撮像観測で得られた8万個の銀河のスピン判定は2020年に発表済みであるが、それらの赤方偏移値を加えたカタログの作成にも取り組んでおり、3次元空間での解析を目指している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年4月から開始した本研究では、2022年度末までに、全天の7割をカバーするPanSTARRSの銀河画像ライブラリから約30万件の画像を抽出し、研究代表者および共同研究者2名による、渦巻銀河の渦巻方向がS型であるかZ型であるかの判定を行い、約14万個の銀河についての判定結果をカタログにとりまとめている。この解析法とカタログの説明、および簡単な統計的解析結果は12月の京都大学での国際研究会や1月の国内研究会で口頭発表済みであり、論文投稿とカタログ公開にむけて準備を整えている。
カタログ作成にあたり、測定値についての様々な検証を進めながら、慎重に作業を行っており、時間がかかっているが2023年度中には完成予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、S/Z判定に加えて、すべての銀河の軸比と方位角の再測定をすすめている。これらが揃うと銀河の自転ベクトルの分布に関してこれまでにない。独自の分析が可能となる。銀河の形状(軸比と方位角)のみを使った研究例は多いが、これにスピン符号の判定を加えてことで自転ベクトルの4つの縮退を解き2縮退にまで減じたデータで分析ができる。さらに傾いた銀河円盤の手前側の判定を色の偏りあるいはダークレーンの銅千枝から行うことができる銀河については縮退を完全に得ことができるので、そのような分析の可能性の検討も進めている。
PanSTARRSの全天データでは我々の周りの局所宇宙内での自転ベクトルの分布の偏りの有無を判定するが、すばる望遠鏡のHSCによる高感度広視野撮像観測で得られた8万個の銀河のスピンデータからはより遠方の宇宙での3次元空間での分布の偏りの有無を判定することにも取り組むため、その解析手法を検討しながら進める計画である。
銀河の形状と分布の共相関を調べる新たな手法が注目を集めており、この手法を銀河スピンと分布の共相関に応用する可能性について、共同研究者と検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナで研究会等の出張件数が想定数以下であったが、ZOOM参加ではやはり十二分な議論ができないので,未使用額は次年度の旅費・交通費に振り替える計画である。
|