研究実績の概要 |
本研究では現実的な初代星団(First Star Cluster)での初期質量関数や連星頻度などの物理量を導出することを目指している。初年度は当初現実的な合体条件を用いてミニハロー中のガス雲の収縮・分裂計算を行う予定であったが、まず以下のような研究を遂行した。 1)原始星合体条件の決定:現実的な合体条件を確立するためのSPHによる数値計算を行なった。その結果、合体は連星をなす2つの原始星の軌道角運動量が原始星自身の自転角運動量に移行することによって起きることを確かめ、現実的な原始星のモデルでは半径の20% 程度のオーバーラップがあるところまで接近できると合体に至ることがわかった(Kirihara+2023論文投稿中)。 2)初代星形成環境での乱流強度の理解:乱流の分裂に対する影響を考慮するために、まず収縮するガス雲で乱流がどのレベルまで発達するのかを数値的・解析的に調べた。その結果、最終的な乱流のマッハ数はガスの有効断熱指数のみで記述できることを明らかにし、ミニハロー中の星形成雲で超音速乱流が発達する明確な物理的説明を得た(Higashi, Susa, Chiaki 2022)。またSPH計算でもシア抑制機構を導入すれば、乱流の発達を十分表現できることもわかった。 3)初代星形成環境での円盤分裂の物理:合体条件は過去の研究と同一(シンク半径一定)であるが、有効断熱指数を変えた場合のガス雲の収縮・分裂計算を行い、有効断熱指数によって分裂の様子が著しく変更を受けることがわかった。またこの結果は数値的のみならず解析的にもよく理解できることが明らかとなった。これにより初代星形成環境では小星団が生まれやすいことが理論的に裏付けられた(Susa+2023 論文執筆中)。
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