研究課題/領域番号 |
22K03697
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
天野 孝伸 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00514853)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙プラズマ / 衝撃波 / 粒子加速 / 宇宙線 / プラズマ波動 |
研究実績の概要 |
電子の輸送方程式として最も簡単な拡散近似を用いた方程式系の半解析解(数値解)を求める計算コードを整備した.輸送方程式は空間1次元,エネルギー方向1次元の2次元の方程式であり,数値解法としては両方向をChebyshev多項式で展開した擬スペクトル法を用いている.この手法によって,比較的低コストで輸送方程式の定常解を求めることができるようになり,衝撃波遷移層内部における電子加速を議論することができるようになった.
実際に輸送方程式の解を求めるためには,拡散係数とそのエネルギー依存性の情報が必要となる.電子の拡散は,物理的にはプラズマ波動による電子のピッチ角散乱によって引き起こされるものである.しかしながら,その理論的な見積もりは特別な場合を除いて困難であり,地球バウショックの観測データ解析から波動強度やそれに伴う散乱効率の見積もりが重要となる.そこで,MMS衛星の観測データから統計的に波動強度と衝撃波のパラメータの相関を調べ,特に衝撃波のAlfvenマッハ数に対して波動強度が正の相関を持つことを示唆する結果を得た.
Alfvenマッハ数が更に大きな超新星残骸衝撃波の場合に優勢となるWeibel不安定性について,2次元および3次元の大規模数値シミュレーションによって調べた.その結果,電子が磁化率が不安定性の線形・非線形発展に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.詳細な理論的考察から,この新たに発見した電子の磁化の影響が顕著になるパラメータ領域が実際に超新星残骸衝撃波の典型的なパラメータと一致することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
輸送方程式の数値計算コードや観測データの統計解析については概ね想定通りの進展が見られている.数値シミュレーションについてはよりAlfvenマッハ数が大きい領域の計算を先に進めることで大きな成果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
輸送方程式は拡散近似をしない,より原理的な3次元モデルの数値計算コード開発を進める.観測データ解析についてはイベント数を増やし,より統計精度を上げる.数値シミュレーションはよりマッハ数の小さい領域についても計算を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
緩和されていたとは言えコロナ禍が継続していたこと,また計画初年度ということもあり,国際会議への参加を控えて,基礎的な解析やコードの整備に注力した.今後はこれまでに得られた成果を積極的に発信していく予定であり,そのための国際旅費や論文出版費としての使用を見込んでいる.
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