研究課題
本年度は、米国のVan Allen Probes衛星と我が国のあらせ衛星によって取得された10年弱にわたる放射線帯電子の計測データから抽出された、超相対論的電子が生成される場合とされない場合の地磁気擾乱イベントにおいて、位相空間密度を用いた解析をもとに、相対論電子・準相対論電子の振る舞いに関して調査を行った。超相対論的電子が生成される地磁気擾乱イベントにおいては、位相空間密度がピークを有するような放射線帯電子の分布が見られることから、内部加速によって超相対論的電子が生まれている可能性が示唆された。また、超相対論的電子が生成されるイベントにおいては、時間が経過するにつれて、1MeV付近を境にして低エネルギー側ではフラックスの減少が、高エネルギー側ではフラックスの上昇(=超相対論的電子の生成)がみられた。これは、1MeV以下のエネルギーをもつ準相対論電子が加速され、1MeV以上のエネルギーをもつ超相対論的電子となることで解釈可能である。上記の解析と並行して、プラズマ波動を用いて背景電子密度を推定したところ、超相対論的電子が生成されるイベントにおいては、プラズマ密度が極端に低く、従来使用されてきたモデルの予測値とは大きく異なることが明らかになった。以上の結果より、プラズマ密度が極端に低くなることでコーラス波動が共鳴可能な電子エネルギーが大きく上昇し、超相対論的電子を生成するという説が示された。数値計算を行う上で、上記の解析で得られた電子・プラズマ密度の情報に加え、加速を担うコーラス波動の情報を得ることが必要であるが、6年間にわたるあらせ衛星の波動観測データを用いて、コーラス波動の強度・周波数モデルに関する構築した。これにより、電子加速に関する数値計算が実施可能である。
2: おおむね順調に進展している
データ解析において、超相対論的電子が生成されるイベントにおける電子・プラズマ密度に関しての情報を整理することができている。また、数値計算には電子・プラズマ密度の情報に加え、加速を担うコーラス波動の情報が必要となるが、本年度のデータ解析により強度・周波数スペクトルのモデルを構築することができた。以上のことから、本研究は順調に伸展しているといえる。
コーラス波動の加速を記述できる数値計算モデルの構築し、そのモデルにデータ解析から得られた情報を入力することで、コーラス波動による電子加速によって、超相対論的電子生成を定量的に説明可能かを検討する。
データ解析やモデル構築などを優先的に進めたために、国際学会での発表の見送りに加えて、論文は執筆中の段階に留まってしまったが、来年度では国際学会での成果報告と論文投稿を行うため、渡航費や出版費用として次年度使用額を利用する。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Earth, Planets and Space
巻: 76 ページ: -
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https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-09-15-1