研究課題/領域番号 |
22K03702
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
亀山 真典 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70344299)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | スーパ地球 / マントル対流 / 数値シミュレーション / 断熱圧縮 / 内部発熱 |
研究実績の概要 |
太陽系外巨大地球型惑星のマントルダイナミクスの理解に向けて、今年度は内部発熱の効果を取り入れたシミュレーションモデルを新たに開発し、対象とする惑星のサイズに加えて内部発熱の効果の強さを段階的に変えながらマントル対流の数値シミュレーションを実施した。数値シミュレーションモデルとして、2次元箱型あるいは2次元半円環領域をとり、非弾性流体近似 (TALA) のもとでの圧縮性流体の熱対流を考える。惑星サイズを地球の1倍から10倍、単位質量あたりのマントル物質の内部発熱率を、最大で地球の「枯渇したマントル (depleted peridotite)」の4倍まで変化させてシミュレーションを行い、内部発熱率の大きさと惑星サイズの組み合わせごとに結果を解析・比較した。その結果、惑星サイズが大きくなるほど内部発熱の効果が大きくなるという結果が得られた。その原因として、惑星サイズとともに内部発熱による発熱の総量も大きくなることに加えて、マントルの厚みの増加に起因して冷却の効率が低下することとの相乗効果により、マントル内部の温度の上昇量が大きくなったことが挙げられる。特に、惑星サイズや内部発熱率がともに十分大きい場合にはマントル最深部に対流しない「成層圏」が出現することが確認できた。この「成層圏」は、マントル最深部が(時には核の温度を上回るほど)高温になり、断熱温度変化が対流を妨げる効果が大きくなることにより出現する。マントル深部に成層圏をもつような大きなスーパー地球では、たとえ金属核が流体であったとしても対流が抑えられるであろうことから、固有の磁場を持つことができず、生命の存在可能性も低くなってしまうことが予想される。現在はこの成果を論文へとりまとめる作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元箱型形状モデルに加え、2次元円環形状モデルを用いたシミュレーションが順調に進んでいる。これにより広大なパラメータ空間の網羅的な調査の第一歩となる、マントル物質の物性の効果や惑星の大きさの効果を検討するためのシミュレーションが当初の計画通りに実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発・活用してきた2次元数値シミュレーションモデルを主に用いることによ り、巨大地球型惑星のマントル対流の様相に影響を及ぼすと期待される要素に注目した数値シミュレーションを実施する。具体的には熱対流の加熱様式を調整して下部加熱の効果を排した理想的な条件で実験すること、および惑星サイズだけでなく、粘性率や熱伝導率といった物性量の変化の効果を調査することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
業務の都合により、学会・研究会への参加の予定を短縮したことの影響が大きい。ただしその分を計算機資源の増強などに充てることができ、そのことが2次元部分円環領域モデルや2次元箱型モデルを用いたシミュレーションの推進に大きく役立った。発生した次年度使用額は今年度の経費と組み合わせて、当初計画分より高度な計算機資源を追加することや成果の論文化の加速、さらに学術論文のオープンアクセス化に要する経費として使用することを計画している。
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