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2023 年度 実施状況報告書

北太平洋亜熱帯モード水の十年規模変動が表層水温と気候に及ぼす影響

研究課題

研究課題/領域番号 22K03716
研究機関東京海洋大学

研究代表者

小橋 史明  東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80377077)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード亜熱帯モード水 / 梅雨 / 台風 / 水温躍層 / 海面水温
研究実績の概要

本研究は,北太平洋亜熱帯北西部の深さ150-300 mに広く分布する亜熱帯モード水が表層水温および大気に与える影響を明らかにすることを目的としている.本年度は,梅雨と台風に着目して,亜熱帯モード水が大気に与える影響を調べた.
気象庁の作成する1970年以降の海洋観測データおよび欧州中期予報センターの大気再解析データERA5,衛星観測の降水データCMAPを用いて,6月の梅雨と亜熱帯モード水の十年規模変動との関係を調べた.厚い亜熱帯モードは,モード水の上を覆う季節躍層を持ち上げて,亜熱帯域の海面水温を低下させる.この海面水温の低下は,海洋からの蒸発量を減少させる.一方,北緯30-35度付近に分布する梅雨の降水帯では,降水が強化することが明らかになった.この降水の強化は,大気下層に発達する低気圧性循環に伴う水蒸気フラックスの収束により引き起こされる.厚い亜熱帯モード水による海面水温の低下は,亜熱帯南側に分布する海面水温前線を強化し,それにより大気に低気圧性循環が励起されることが示唆された.
日本南岸を流れる黒潮は,2017年以降,紀伊半島沖から東海沖で南へ大きく蛇行する状態が続いている.アルゴフロートおよび船舶や衛星の観測データを解析した結果,黒潮大蛇行により,黒潮続流の南から日本南方海域に運ばれてくる亜熱帯モード水の体積が著しく減少し,それにより日本南方海域の表層の水温と貯熱量が上昇していることが明らかになった.このようなモード水に起因する表層水温の上昇は,日本南方海域を通過する台風の発達を強める傾向があることが,台風のベストトラックデータの解析から明らかになった.これらの結果は,大気モデルを用いた数値実験からも確認することができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

亜熱帯モード水の変動が大気に及ぼす影響の解析に着手し,成果の一部を国際的な学術誌に発表した.したがって,研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる.

今後の研究の推進方策

本年度実施できなかった複数の海洋再解析および数値モデルのデータ解析を行い,亜熱帯モード水の表層海洋へのインパクトや大気への影響の再現性を比較する.これにより,気象・気候における亜熱帯モード水の役割の解明を目指す.

次年度使用額が生じた理由

予定していた国際学会に参加できなかったため旅費の支出が減少した.今年度の学会参加旅費として使用する予定である.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Subtropical Mode Water south of Japan impacts typhoon intensity2023

    • 著者名/発表者名
      Oka Eitarou、Sugimoto Shusaku、Kobashi Fumiaki、Nishikawa Hatsumi、Kanada Sachie、Nasuno Tomoe、Kawamura Ryuichi、Nonaka Masami
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      10.1126/sciadv.adi2793

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 北大西洋亜熱帯モード水厚変動の海洋表層新生産への影響2024

    • 著者名/発表者名
      西川はつみ,岡英太郎,杉本周作,小橋史明,石井雅男
    • 学会等名
      日本海洋学会海洋生物シンポジウム2024
  • [学会発表] Influence of North Pacific subtropical mode water variability on the surface mixed layer through the heaving of the upper thermocline on decadal timescales2024

    • 著者名/発表者名
      Fumiaki Kobashi, Norihisa Usui, Naoto Iwasaka, Nanami Akimoto, Naoto Iwasaka, Toshio Suga, and Eitarou Oka
    • 学会等名
      Ocean Sciences Meeting 2024
    • 国際学会
  • [学会発表] Subtropical Mode Water south of Japan impacts typhoon intensity2024

    • 著者名/発表者名
      Eitarou Oka, Shusaku Sugimoto, Fumiaki Kobashi, Hatsumi Nishikawa, Sachie Kanada, Tomoe Nasuno, Ryuichi Kawamura and Masami Nonaka
    • 学会等名
      Ocean Sciences Meeting 2024
    • 国際学会
  • [学会発表] 黒潮・親潮混合域における冬季海面熱フラックスの年々変動2023

    • 著者名/発表者名
      藤島遼人,小橋史明,岩坂直人
    • 学会等名
      名古屋大学共同利用研究集会 第6回ISEEシンポジウム
  • [学会発表] 日本の南の亜熱帯モード水が台風に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      岡英太郎,杉本周作,小橋史明,西川はつみ,金田幸恵,那須野智江,川村隆一,野中正見
    • 学会等名
      第56回メソ気象研究会
  • [学会発表] 北太平洋亜熱帯モード水に起因する季節躍層の上下動が混合層に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      小橋史明,碓氷典久,秋元七海,岩坂直人,須賀利雄,岡英太郎
    • 学会等名
      日本海洋学会秋季大会
  • [学会発表] 日本の南の亜熱帯モード水が台風に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      岡英太郎,杉本周作,小橋史明,西川はつみ,金田幸恵,那須野智江,川村隆一,野中正見
    • 学会等名
      日本海洋学会秋季大会
  • [学会発表] 北太平洋中央モード水の体積変動について2023

    • 著者名/発表者名
      岩坂直人,小橋史明
    • 学会等名
      日本海洋学会秋季大会
  • [学会発表] 日本の南の亜熱帯モード水が台風に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      岡英太郎,杉本周作,小橋史明,西川はつみ,金田幸恵,那須野智江,川村隆一,野中正見
    • 学会等名
      Japan Geoscience Union Meeting 2023
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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