研究実績の概要 |
【モデル改良と降水メカニズム解明】素過程追跡モデルに改良を加え、凝集体粒子に含まれる初期氷晶の数を追跡できるようにした。氷粒子の雲粒捕捉成長量について、温度によるクラス分けを組み込んだ。降水粒子撮像ゾンデ(明星電気[1])の試験観測で捉えられた南岸低気圧に伴う降水粒子の特徴[2]と素過程追跡モデルの結果を比較し、モデルが降水粒子の特徴をよく再現していることを確認できた。さらに、後方流跡線解析を行い、この事例で捉えられた雲粒付き雪粒子の生成には、茨城県沖の対流性降水域から供給された過冷却雲粒が寄与していたことが分かった。気球による降水雲の直接観測と素過程追跡スキームの連携によって降水機構解明に資する知見が得られることを示した。 【温暖化研究への波及】素過程追跡スキームが組み込まれた次世代気象気候科学における基盤ライブラリモデル(SCALE, 理研)による数値実験をもとに、北海道における降雪粒子タイプの分布が温暖化によってどのように変化するか検討した[3]。 [1] 明星電気株式会社, 2023: 「降水粒子撮像ゾンデRainscope」による線状降水帯集中観測.明星トピックス, 197, https://www.meisei.co.jp . [2] Suzuki et al., 2022: Development of a new cloud/precipitation particle imaging radiosonde. 19th Annual Meeting of the Asia Oceania Geosciences Society, A39. [3] 鎌田ほか, 2022, 数値モデルを用いた冬季北海道に おける降雪結晶に関する解析. 雪氷研究大会 (2022・札幌), D2-1, https://doi.org/10.14851/jcsir.2022.0_107 .
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