研究課題/領域番号 |
22K03728
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
伊東 素代 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), 副主任研究員 (60373453)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 北極海 / 海洋物理 / 海洋温暖化 / 環境変動 |
研究実績の概要 |
現場観測としては、2022年9月に設置した表層観測システムを取り付けた係留系3系の観測を2024年9月まで継続実施している。また、バロー海底谷での詳細な熱量把握行うため、2023年9月に「みらい」にて係留系地点を含む観測ラインで海底谷横断の詳細観測を実施した。更に、海盆域での熱量把握のため、海洋地球研究船「みらい」とカナダ沿岸警備隊砕氷船「ルイ・サンローラン」で連携して、広域の海洋観測を実施した。
これまで取得した係留系観測データの解析については、過去20年間のバロー海底谷の流量、熱輸送量の季節、経年変動とその原因の解析結果について国際学会で口頭発表を行った。また、2021年から実施中の表層観測システムの観測データを用いた高精度な流量、熱輸送量の見積もりと誤差評価の解析結果については、国内学会でポスター発表を行った。長期変動の解析結果は論文にまとめ、査読付き英文雑誌に投稿予定である。
この研究課題では、北極海の海氷減少の一因で、北極海の海盆域に膨大な熱を運ぶ夏季太平洋水の主要流路上にあるバロー海底谷において、近年、開発された新たな手法を導入することで、海洋表層の時系列観測に挑戦し、夏季太平洋水の熱輸送量の定量化を実現することを目的としている。2021年から開始した海洋表層の時系列データを用いることで、2021年9月から2022年9月の1年間の夏季太平洋水の熱輸送量の高精度な見積もりに成功し、従来の観測方法では熱輸送量が5-40%過小評価されることを示唆する結果が得られた。2024年9月まで時系列観測を継続しており、得られたデータから更に信頼度の高い熱輸送量の見積もりと誤差評価を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現場観測については、表層観測システムを取り付けた北極海バロー海底谷の係留系3系による時系列観測を2022年9月から継続実施している。また、海洋地球研究船「みらい」を用いた係留系観測点に沿った高解像の海洋観測、「みらい」およびカナダ沿岸警備隊砕氷船「ルイ・サンローラン」を用いた海盆域における広域の熱量把握のための海洋観測を実施した。どちらも当初計画通りの実施状況である。
データ解析については、これまで取得した過去20年間の長期の係留系観測データの解析、本科研費で実施している表層観測システムのデータの解析を進め、国際学会で2回の口頭発表、国内学会で1回のポスター発表を行った。長期変動の解析結果は論文にまとめ、査読付き英文雑誌に投稿予定である。2023年度中の論文投稿までには至らなかったが、ほぼ計画通りの実施状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現場観測については、2024年9月に海洋地球研究船「みらい」に、首席研究者として乗船し、係留系の回収、再設置を行なう予定である。また、熱量把握のための海洋観測は、「みらい」に加えて、2024年8月のカナダ沿岸警備隊砕氷船「ルイ・サンローラン」と2024年7月のアメリカ砕氷船「ヒーリー」でも実施することを調整済で、本科研費で購入した投下型水温塩分計をカナダ、アメリカに発送し、現地に到着済である。 データ解析のうち、「3.バロー海底谷の熱輸送量変動の原因解明」については、英文論文を投稿予定である。「2.バロー海底谷の熱輸送量の定量化」については、2024年度秋に回収予定のデータも含めた3年分の海洋表層の時系列観測のデータの解析を行ない、熱輸送量の見積もりの高精度化、誤差評価を進め、国際学会等で発表を行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)更なる円安の可能性も考えて海外出張旅費を試算したが、実際は試算ほどは円安でなかったため、7万円程度の残額が発生したが、支出合計は、ほぼ使用計画通りであった。(使用計画)論文投稿のための英文校閲費用として使用予定である。
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