研究課題/領域番号 |
22K03732
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
伴 雅雄 山形大学, 理学部, 教授 (50208724)
|
研究分担者 |
新城 竜一 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (30244289)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 噴火予測 / 斑晶化学組成 / 滞留時間 / 浅部マグマ / 高温マグマ |
研究実績の概要 |
活火山の多くは休止状態にあり、それらの噴火予測は噴火災害軽減に極めて重要である。本研究では、前兆的現象が発生してから噴火に至るまでの時間を、過去の噴出物中の結晶の分析・解析により見積る方法を確立するという目的で、前兆現象が認められている蔵王山を対象とし(A)約100年間の休止を経て噴火が起こった年代(13、17、19世紀)の噴出物を用いて(B)試料中の斑晶のうち中長期滞留時間を示す見込みのものについて滞留時間を求め(C)深部マグマ注入開始(前兆現象開始)から噴火までの時間を見積り、今後の蔵王山の噴火時期を予測することを進めている。今年度は特に昨年度系統的に採取した火山灰試料について(B)を進め、得られた結果を基に(C)の検討も進めた。以下に具体的に記す。 (A)100年間程度の休止の後に噴火が起こったことが解明されている13、17、19世紀の噴火開始直後のテフラの試料について、昨年度に系統的に採取を行ったが、今年度は13と17世紀噴火の火山灰試料について試料数を増やすと共に、輝石結晶について抽出数を増やし、それらについて薄片作成を行った。 (B)輝石について作成された薄片を基に、中長期滞留時間を示すと見込まれる結晶を高Mg帯が広い結晶という観点から抽出する作業を進め、多くの結晶粒について中期滞留時間を推定し、滞留時間を求めた。斜長石については、中長期滞留時間を保持し、かつその滞留時間の測定が可能そうな結晶がかなり少ないことが判明した。その数少ない結晶粒については組成累帯の分析を継続して行った。なお、斜長石結晶の起源を解明するのに必要なため、御釜活動以前の噴出物についての同位体比分析を進めた。 (C)得られた結果を基に、深部マグマ注入開始(前兆現象開始)から噴火までの時間を見積った。 得られた成果の一部を学会で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、蔵王山を対象とし、(A)約100年間の休止を経て噴火が起こった年代(13、17、19世紀の噴火)の噴出物を用いて、(B)噴出物中の輝石と斜長石の中から中長期滞留時間を示すと見込まれる結晶を選出し、それらを大量に分析して滞留時間を求め、(C)高温マグマ注入開始(前兆現象開始)~噴火に至るまでの時間を見積り、蔵王山の次の噴火の時期も予測するものである。 本年度は、(A)昨年採取し分析準備を進めた火山灰試料について、試料数を増やすとともに、輝石結晶を多数抽出して薄片を作成し、(B)輝石結晶の組成累帯を分析し、滞留時間の見積もりを行った。なお、斜長石については中長期滞留時間を測定できる可能性がある結晶がかなり少ないことが判明したが、その少ない結晶粒については組成累帯の分析を進めた。 当初の計画では、今年度は(A)について補足し、(B)についてある程度の成果を得、(C)の高温マグマ注入開始(前兆現象開始)~噴火に至るまでの時間の見積りを開始する予定であった。上に記したように、当初の予定通りにほぼ進行していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、蔵王山を対象とし、(A)約100年間の休止を経て噴火が起こった年代(13、17、19世紀の噴火)の噴出物を用いて、(B)噴出物中の輝石と斜長石の中から中長期滞留時間を示すと見込まれる結晶を選出し、それらを大量に分析して滞留時間を求め、(C)高温マグマ注入開始(前兆現象開始)~噴火に至るまでの時間を見積り、蔵王山の次の噴火の時期も予測するものである。 今年度までに、(A)については、既採取試料及び火山灰層から採取した試料について薄片作成を進めた。また、(B)では、輝石結晶について、既採取試料及び火山灰試料から、中長期滞留時間を示すと見込まれる結晶を抽出する作業を進め、多くの結晶について組成累帯を測定し中期滞留時間を推定した。斜長石については、既存試料について、核部が清澄の結晶という観点で探したが数がかなり少ないという結果を得た。それらの結晶については組成累帯の測定を進めた。 次年度は次のように推進する予定である。(A)については必要がある場合は補足的に採取を行う。(B)については、輝石は既存試料及び火山灰試料のうち13と17世紀噴火の試料については当初の予定以上の数の結晶粒を基に組成累帯を測定し、滞留時間の推定を行った。13と17世紀噴火の試料についてはさらに粒子数を増やし測定・推定を進め、19世紀噴火についても多くの輝石結晶について測定・推定を進める。斜長石については、これまでに行った組成累帯測定に加えて分析数を増やし、結果を基に滞留時間の推定を行う。なお、斜長石結晶の起源を解明するのに必要な御釜活動以前の噴出物についての同位体比分析を継続する。(C)については、上記によって得られた滞留時間を基に、高温マグマ注入開始~噴火に至るまでの時間を見積り、蔵王山の次の噴火の時期も予測する。得られた成果を基に論文作成を完成させ投稿作業を進め、年度末までには研究を総括する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に研究に必要な分析機器の故障が生じたため、修理経費の一部に用いるために分担金を追加したが、修理経費の支払いの都合で追加した分担金に余剰が生じ、今度に繰り越した。今年度は、昨年度の余剰分を消化し切ることができなかったことに加え、新たに分析機器の設置されている分析室が台風被害に遭い、分析消耗品の購入量が少なかったためさらに余剰金が発生した。これまでの余剰金は最終年度の次年度に使用する計画である。
|