研究課題/領域番号 |
22K03733
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池端 慶 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (70622017)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 自然銅 |
研究実績の概要 |
地球上で銅は、一般的に硫黄や酸素との化合物(黄銅鉱、赤銅鉱など)として存在している。しかし、蛇紋岩中には、単体の銅(自然銅)が産出することがあるが、その地球化学的特徴や成因は未だ良く分かっていない。自然銅に含まれる銅や亜鉛の安定同位体比は、形成時の温度や酸化還元状態など、自然銅の成因の解明に大変有効な指標である。本研究では、蛇紋岩中の自然銅に含まれる銅や亜鉛の安定同位体比を高精度で測定し、これら自然銅の形成機構を明らかにすることを目的とする。 本年度は、昨年度に引き続き、いくつかの蛇紋岩体の地質調査を行い、自然銅を含む可能性がある試料を採集することができた。野外では確認することが困難であるミクロンレベルの微細な自然銅や関連鉱物の種類、形態学的特徴などは、岩石カッターなどで試料を丹念に切断した後、実体顕微鏡、反射金属顕微鏡、顕微ラマン分光装置などを使用して確認した。ミクロ切削装置などを使用して採取したいくつかの自然銅と関連含銅鉱物粒子は、クリーンルーム内で酸分解を行い、四重極型誘導結合プラズマ質量分析装置により主要・微量元素組成分析を行った。その結果、これら試料の銅同位体比分析のために、分析前処理として陰イオン交換樹脂を用いたマトリックス元素の除去は必要ないことが分かった。マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析装置により分析した自然銅と関連する初生含銅鉱物との銅同位体比から、予察的結果であるが、自然銅は初生含銅鉱物の変質により形成したことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に引き続き、微細な自然銅を産出する蛇紋岩を採集し、自然銅や自然銅に関連する各種銅鉱物・脈石鉱物などの基本的な岩石・鉱物学的記載を行い、それらの特徴について把握することができた。採集試料中の含銅鉱物の量が当初の想定以上に少なく、採集した岩石の前処理に当初の想定以上に時間がかかったが、一部の試料に関しては、自然銅や自然銅に関連する各種銅鉱物の主要・微量元素組成分析を実施して、銅同位体比分析に最適な前処理手法や分析条件などを評価することができた。さらに、自然銅や自然銅に関連する各種銅鉱物の銅同位体比分析を実施して、それらの成因について推定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き本年度に記載を行った蛇紋岩試料に加え、他の地域の蛇紋岩中に存在する産状の異なる自然銅試料の採集とそれらの岩石・鉱物学的記載を実施する。また、引き続き産状や組織を確認した様々な銅鉱物に対する主要・微量元素組成分析を実施し、高精度銅・亜鉛同位体組成分析のための分析前処理方法や分析条件などの検討を十分に行う。その後、これらの試料に対して銅・亜鉛同位体組成分析を実施し自然銅の形成機構を把握する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に採集した岩石試料中に含まれる含銅鉱物の量が当初の想定以上に少なく、採集した岩石の前処理に当初の想定以上に時間がかかることが判明した。そこで当初予定した野外調査の回数を減らして、採集した岩石の前処理を優先したため、国内旅費などの使用額が減り、次年度使用額が生じた。次年度使用額の使用計画としては、追加の野外調査の旅費などに充てる予定である。
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