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2022 年度 実施状況報告書

微小領域・同位体比分析による金・白金鉱床の成因解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K03736
研究機関静岡大学

研究代表者

森下 祐一  静岡大学, 防災総合センター, 客員教授 (90358185)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード金 / 白金族 / 熱水性鉱床 / 海底熱水鉱床 / 鉱床成因 / SIMS / 微小領域分析 / 安定同位体比分析
研究実績の概要

産業で重要な役割を担う金 (Au) と、白金 (Pt) などの白金族元素 (PGE) は、自然界においてミクロなスケールで偏在する希少元素である。本研究では、金鉱石や白金族鉱石などにおける“見えないAu”や“見えないPt”の存在形態を、ナノメータースケールの高空間分解能で分析できる二次イオン質量分析法 (SIMS) を用いて解明する。AuやPtの存在形態は元素の沈殿メカニズムに依存していると考えられるため、SIMS定量分析に加えて安定同位体比質量分析法(IRMS)も活用してAu, Pt 鉱床の生成環境を明らかにすることを最終目的とする。
研究実施計画で初年度に行うこととしていた菱刈鉱床の成因解明を目的として、0.4mgまでの微小方解石試料の炭素酸素同位体比を測定して世界的に高品位で有名な菱刈金鉱床を生成した熱水の起源と進化を推定した。菱刈鉱床の基盤岩は北薩地域の周辺金鉱床と同様に四万十層であるが、四万十層中の有機炭素と反応して熱水中の溶存炭素種の炭素同位体比が低くなった。一方、北薩地域の他の金鉱床では熱水は全て天水起源であるのに対し、菱刈鉱床ではマグマ起源の熱水が天水起源の熱水系に流入することにより、高品位な金の濃集を実現したと結論した。
本研究では黄鉄鉱の微小領域硫黄同位体比も測定した。先行研究ではバルク岩石の硫黄同位体比として約0パーミルが報告されており、マグマ起源の値を示すと考えられていた。本研究では二次イオン質量分析法(SIMS)を用いて黄鉄鉱の3マイクロメーター領域の硫黄同位体比を分析した。黄鉄鉱の硫黄同位体比の大部分が0パーミル付近に分布する点は先行研究と同様であるが、金の濃集部(Keisen veins)でかなり低い値を示すことがわかった。この研究成果は、バルク分析ではなく3マイクロメーターの微小領域で分析したことにより得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画調書に記載した研究計画初年度内容の多くを実施することができたため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
得られた研究成果は以下の国際誌に投稿して公表された。Morishita, Y.; Yabe, Y. Genesis and evolution of hydrothermal fluids in the formation of the high-grade Hishikari gold deposit: Carbon, oxygen, and sulfur isotopic evidence. Minerals 2022, 12, 1595, doi.org/10.3390/min12121595.
更に、次年度以降に行う予定の海底熱水鉱床に関する予察研究を実施した。また、研究計画調書に記載していない内容であるが、本研究計画の研究目的に合致する研究の予察として、中央構造線の断層岩を対象として化学分析を実施した。

今後の研究の推進方策

次年度以降に行う今後の推進方策として、Morishita et al. (2018) のAu/As定量法を用いて、海底熱水鉱床を含むいくつかの鉱床の硫化鉱物をSIMSでAu/As分析し、生成環境と成因の解明に関する研究を行う。
海底熱水鉱床の黄鉄鉱を対象としたSIMS深さ方向微小領域分析はまだ世界で行われていない分析であり、精度の高い分析に基づき、研究を進展させて成果をまとめる予定である。
米国アラスカ州のポゴ金鉱床は、堆積性鉱床とされていたが、SIMS分析により石英内部にAuが見いだされ(Morishita, 未公表)、熱水性鉱床であることがわかった。SIMS微小領域分析によりこの石英脈中に見出した“見えないAu”の評価を行う。また、炭酸塩鉱物(シデライト、アンケライト、カルサイト)が鉱床生成と密接に関連している事を安定同位体比から明らかにし、両手法を統合してポゴ鉱床の熱水の進化を描き出す。
また、伊豆半島南部の鉱床や北海道の上国鉱床から得た炭酸塩鉱物の炭素・酸素同位体比測定に基づき、これら熱水鉱床の熱水の起源や進化について明らかにしていく予定である。一方、中央構造線断層や南アフリカ共和国のブッシュフェルト複合岩体のPGE鉱床への熱水の影響に関しても検討を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

本年度はコロナ禍のため海外でのフィールドワークを行わず、実験室における作業を中心に研究を進めたために使用額が減少した。
次年度は、本年度に引き続き研究計画に沿って研究を実施し、研究成果の学会発表を行うほか、論文として国際誌に公表するために論文投稿料やオープンアクセス料として予算を使用する予定である。海外でのフィールドワークの可能性についても検討していく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Genesis and Evolution of Hydrothermal Fluids in the Formation of the High-Grade Hishikari Gold Deposit: Carbon, Oxygen, and Sulfur Isotopic Evidence2022

    • 著者名/発表者名
      Morishita Yuichi、Yabe Yoriko
    • 雑誌名

      Minerals

      巻: 12 ページ: 1595~1595

    • DOI

      10.3390/min12121595

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Significance of carbon and oxygen isotope ratios of hydrothermal calcite: Re-recognition of calcite for the interpretation of fluid-rock interaction processes during ore mineralization2022

    • 著者名/発表者名
      Morishita, Y.
    • 学会等名
      Goldschmidt Conference 2022, Hawaii
    • 国際学会
  • [学会発表] 防災における地質学:環境アセスの事例から2022

    • 著者名/発表者名
      森下 祐一
    • 学会等名
      静岡大学防災総合センター研究会(オンライン)

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公開日: 2023-12-25  

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