研究課題/領域番号 |
22K03739
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
古川 邦之 愛知大学, 経営学部, 教授 (20440620)
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研究分担者 |
金丸 龍夫 日本大学, 文理学部, 准教授 (40453865)
壷井 基裕 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (60411774)
宇野 康司 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10510745)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 黒曜石 / 珪長質マグマ / 含水量 / 火道 |
研究実績の概要 |
本研究は地下の珪長質マグマにおいて、どのように脱ガスが進行し、その過程が噴火様式とどう関わっているのか、という基本的な火道プロセスの理解を目的としている。それを解く鍵として、火砕岩中に含まれる黒曜石、および黒曜石溶岩に注目している。伊豆半島に分布するカワゴ平火山を主な対象とし、その地質調査、試料採取、化学分析、分光分析を行なっている。2022年度において、溶岩に先行する活動である火山灰層に含まれる黒曜石片の含水量が高いこと、噴火活動の進行に伴い、含水量が減少する傾向があることをつかんでいたが、2023年度にFTIRによる分析試料を増やしたことで、その傾向がより明確となった。また、火山灰の構成について5層準で調べた結果、時間と共に、軽石および石質岩片に比べ黒曜石粒子の割合が増加することがわかった。これらのことから、噴火活動中の火道内には脱ガスの進行した黒曜石が形成されており、それが爆発に伴い火山灰と共に放出されていたこと、時間と共に放出される黒曜石の深度が浅くなっていたこと、また時間と共に火道中の黒曜石の体積が増して火道を塞いだことなどがわかってきた。その黒曜石が再度発泡することで溶岩が流出したと考えられる。黒曜石片の詳細な薄片記載も進めており、黒曜石は均質なマグマではなく、複数の粒子が付着することで形成されたことがわかってきた、さらには剪断による変形構造もみられるため、現在は火道壁沿いでの動きも検討中である。これらの研究成果は、珪長質マグマ噴火の火道内プロセスを解く鍵となるため、特に珪長質火山を多く有する日本の災害を考慮する上では重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、FTIR分析を予定よりも早く進めることができた。それにより、2024年度に行う予定だった火山灰構成の分析に取りかかることができた。ただ、機械の不具合により古地磁気分析が遅れている。これについては2024年度の前半に行う予定である。 現時点で大局的なデータの解釈はできており、それをもとに国際黒曜石会議において発表したが、解釈の大きな変更が必要となるコメントはなかった。以上より、本研究は順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに進行しているので、今後も予定通りに研究を推進する。現状で全体の解釈は固まってきているので、2024年度は論文作成に取りかかる予定である。並行して古地磁気分析も行うが、どのような結果が出ても解釈の大きな変更はないと考えている。 また下呂市の湯ヶ峰においても同様に、火砕岩中に黒曜石片が産出するのを確認している。カワゴ平火山のみではなく湯ヶ峰の黒曜石の含水量も分析することで、比較研究からその普遍性を議論できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
古地磁気分析について、機械の不調時期があったため遅れている。そのため分析に必要な物品は次年度に購入することとした。
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