研究課題/領域番号 |
22K03741
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
越川 昌美 (金尾昌美) 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 主幹研究員 (80291045)
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研究分担者 |
渡邊 未来 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 主任研究員 (50455250)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ストロンチウム同位体比 / セシウム同位体比 / 土壌抽出 |
研究実績の概要 |
本研究では、森林土壌の抽出条件に応じて起源や存在部位の異なる陽イオンが抽出される様子を、ストロンチウムやセシウムの同位体比を使って解析することにより、森林土壌に最適な交換性カチオン抽出法を提案する。 2023年度は、抽出実験の固液比、抽出時間、抽出液のpHを変化させる実験を行った。1M 酢酸アンモニウム水溶液を抽出液として、固液比10と固液比25の条件で抽出を行った。抽出液処理条件は、振とう時間 30 分、ろ過フィルター孔径は0.45マイクロメートルとした。抽出液の87Sr/86Sr比を固液比10の3検体と固液比25の3検体で比較したところ、統計的に有意な差はなかった。同様に、Cs137/Cs133比を固液比10の3検体と固液比25の3検体で比較した場合も、統計的に有意な差はなかった。抽出液のpH、抽出時間を変化させる実験については、抽出後に抽出液をろ過する段階までは実施したが、同位体比測定には至らなかった。参考実験として、乾燥状態を変えた土壌の抽出を行い、Sr同位体比を比較した。採取した土壌の一部をそのまま(新鮮土の状態で)抽出し、一部は風乾後に抽出した。新鮮土は含水率を測定しておき、風乾土相当で固液比が10になるように実験を行った。風乾土は固液比10で実験を行った。抽出液処理条件は、振とう時間 30 分、ろ過フィルター孔径は0.45マイクロメートルとした。抽出液の87Sr/86Sr比を比較したところ、測定誤差の範囲で一致したものが2検体、誤差の範囲よりは差が大きいが小数点以下4桁が一致したものが1検体であり、新鮮土と風乾土の抽出液で87Sr/86Srは大きく異ならないことを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抽出条件を変える実験は、抽出液作成までは進んだが、同位体分析の進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、母岩および火山灰の混入程度が異なる森林土壌を採取し、各種抽出法による溶出液の87Sr/86Sr比を分析する。また、原発事故由来137Csが検出される試料については137Cs/133Cs比も分析する。2023年度までに1M 酢酸アンモニウム水溶液を抽出液として、抽出液のpH、抽出時間を変化させる実験を行ったが、抽出液の分析が完了しなかった。今後は抽出液のSr同位体比およびCs同位体比を分析し、実験により得られた87Sr/86Sr比から起源、137Cs/133Cs比から吸着場所を推定することで、従来の母岩起源で溶解・脱離しにくいカチオンまで抽出される条件と、火山灰起源で溶解しやすく土壌に弱く結合しているカチオン(一般に交換性カチオンと想定されている形態)だけが抽出される条件の境界を明らかにする。この後者が、植物が吸収できる移動性画分という意味において、森林土壌の交換性カチオンの分析条件として最適であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
土壌抽出条件を変える実験の進捗が遅れ、その分析に伴う実験予算の執行が遅れたため、次年度使用額が生じた。2024年度は、土壌抽出液の同位体分析を進めるために次年度使用額および2024年度助成金を使用する。
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