研究課題/領域番号 |
22K03758
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山路 敦 京都大学, 国際高等教育院, 教授 (40212287)
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研究分担者 |
西川 治 秋田大学, 国際資源学研究科, 講師 (90375220)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 方解石 / 応力 / 双晶 / 偏差応力空間 |
研究実績の概要 |
方解石双晶の応力解析の方法論的研究と、既存の解析手法による実データの応力解析をおこなった。 前者において問題としたのは、ランダムな格子ファブリックを持つ場合の検討であった。というのも、本研究で実用化を目指している応力解析手法は、双晶ラメラの三次元的方向およびラメラ形成時の三次元的剪断方向の頻度分布にもとづくからである。本手法では、そうした方向データを5次元パラメータ空間(偏差応力空間)の単位球上の点と対応づける。そうしたデータ点の球面上での分布状態から応力を検出する。そこで、ランダム・ファブリックをもつ、すなわち実空間で双晶ラメラの方向が「一様分布」する場合に、この球面面上のデータ点の分布がどうなるかを検討した。本手法ではこの分布を基準として、それからのデータ点分布のズレに注目して、応力を検出するので、この基準分布がどうなっているかを検討したわけである。その結果、実空間での「一様分布」は上記の球面上では一様分布ではないものの、そうみなした場合の誤差は問題にならない程度であることを確かめた。また、この非一様性を考慮した解析ソフトは計算時間が長大になる割に、それを考慮しない解析ソフトと大差ない結果しか得られないことも確認できた。 また、北上山地および阿武隈山地の古生代・中生代から採取した36個の石灰岩サンプルを対象として、方解石双晶から応力解析用データを集めた。これらのデータセットには多重逆解法という応力解析法を適用し、どのような古応力が検出されるかを検討した。この手法は断層データの応力解析のために開発されたものだが、差応力が小さいときにできた双晶ラメラを対象とする場合は、正しく応力を検出できる可能性がある。実際に検出された応力は多様だが、白亜紀にあったとされる横ずれテクトニクスとはおおむね調和的な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で実用化をもくろむ応力解析手法について、方法論的論文を投稿したものの、ランダムな格子ファブリックの場合の検討を追加すべしとの指示が査読者からあり、その方面の追加研究をおこなう必要があった。このため、研究の進捗に当初の想定からみればやや遅れが生じている。 また、方法論的研究では、解析結果の解釈が容易な試料をテスト材料にすべきだが、その選定に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に採取した方解石サンプルは古くて様々な地殻変動を経験していることが考えられるものであるため、解析結果の解釈が容易ではない。しかし研究で実用化する方法との比較検討の材料として役立てる予定である。今年度は結果の解釈が容易であろう若い方解石を取得し、応力解析を実施する予定である。また、本研究で開発した解析手法を論文化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で提案する応力解析法は、5次元空間の単位球をパラメータ空間として、この球面上に射影されたデータ点のクラスター解析を利用した方法である。しかるに、一様ランダムな双晶データに対応する、この球面上でデータ点の分布について検討する必要が新たに生じたため、この方法を提唱する論文が遅れたためである。またこの方法論的な点とは別に、中生代以前というような古い方解石を使った応力解析が簡単ではないことが確認され、上記の方法の実用例を示す方解石の探査に時間を要したために、遅れを生じた。
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