研究課題/領域番号 |
22K03763
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構 |
研究代表者 |
有馬 寛 一般財団法人総合科学研究機構, 中性子科学センター, 研究員 (60535665)
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研究分担者 |
松本 吉弘 一般財団法人総合科学研究機構, 中性子科学センター, 研究員 (80455287)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高圧 / 中性子ラジオグラフィ / CT / 水 |
研究実績の概要 |
本研究は、ビーム輸送と高圧発生装置の制約を考慮した解析方法を開発し、形状だけでなく正確な組成・密度の3次元分布が得られる高圧中性子CT測定方法の実現を目指すものである。中性子CTは非破壊的に物質の内部構造を詳細に観察する有力な手法であるが、高圧条件下での測定は技術的に困難である。これらの課題を克服し、高圧環境下での正確な物質評価を可能にすることを目的としている。今年度は、逐次近似法とビーム輸送モデルを組み合わせることで、中性子散乱および高圧発生装置の影響を低減し、短時間で高精度かつ高空間分解能の3次元モデルを構築することを目指した。具体的には、水の圧縮過程を高圧中性子CTにより観察した。この成果を第65回高圧討論会での招待講演および2023年度量子ビームサイエンスフェスタで発表した。Paris-Edinburgh Cellを用いた高圧中性子CT測定の有効性を確認し、高圧環境での物質評価に寄与する結果を得た。従来の大型中性子カメラに代わり、小型カメラ(MiniPix ver.1.0)を導入し、試料とカメラの距離を88 mmに短縮することで、空間分解能200マイクロメートルの画像取得に成功した。また、逐次近似法によりブラインド領域の影響を排除し、常温5 GPaの鉄片の3次元再構成に成功した。これにより、高圧環境下での物質の詳細な内部構造の観察が可能となった。以上の研究成果は、高圧中性子CT測定の実用化に向けた重要なステップとなり、今後の研究進展に貢献するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の大型中性子カメラに代わり、小型カメラ(MiniPix ver.1.0)を導入し、試料とカメラの距離を88 mmに短縮することで、空間分解能200マイクロメートルの画像取得に成功した。また、Paris-Edinburghプレスを用いた中性子CTでは、逐次近似法によりブラインド領域の影響を排除することで、常温5 GPaの鉄片の3次元再構成に成功した。これにより、高圧環境下での物質の詳細な内部構造の観察が可能となった。次に軽水を封入したテフロンカプセルをアルミ圧力媒体内に固定し、TiZrガスケットおよびアルミリングを用いてWCのシングルトロイドアンビルで加圧した。圧力はアルミ圧媒体の体積から見積もった。撮影は5°ステップでプレス柱間の130°の範囲で行い、1画像あたり10分間の露光を行った。画像はダイレクトビーム像および入射中性子強度で割り算を行った後にCT解析を実施した。WCアンビルを透過する部分についても試料が観察できており、今後、体積等の見積もりを進める。また、得られた再構成像から求めた軽水試料のCT値(見かけ線吸収係数)の変化から相対的には圧力による高密度化が観測できたが、絶対値については散乱線の影響等があり、検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として24年度は、前年度のCTデータを元に逐次近似法とビーム輸送モデルを改良する予定である。特に軽水素含有量が異なる試料を用いた実験で密度評価の精度を向上させる。予想される成果として、短時間測定での高精度な3次元モデルの構築が期待され、高圧下での物性評価方法となるともに、地球科学や材料科学分野での応用が進展する。課題と対策としては解析の複雑化に対しては、計算リソース強化と解析アルゴリズムの最適化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、年度初めに計画していた実験および解析作業のスケジュール調整に遅れが生じたことと必要な準備作業に時間を要したことが原因である。次年度は計算環境の整備として、高性能計算機の導入を予定している。具体的には、GPUクラスタを購入し、解析速度の向上を図る。また、高圧中性子CT測定用の消耗品として、中性子検出器や試料ホルダーの購入を計画している。これにより、測定の効率化と精度向上を実現する。以上の計画に基づき、引き続き研究を推進する。
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