研究課題/領域番号 |
22K03764
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山崎 徹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (00396285)
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研究分担者 |
下田 玄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (60415693)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日高火成活動帯 / 斑れい岩 / かんらん岩 / 火山-深成作用 |
研究実績の概要 |
本年度は,本研究課題の核心をなす3つの「問い」を解決するための試料の採取と野外観察を実施した.具体的には,①日高火成活動帯と日高帯かんらん岩類との成因的関係,及び②ポロシリオフィオライト帯の位置づけの検討のため,日高帯かんらん岩類とポロシリオフィオライト帯かんらん岩類を独自に統一的な視点から観察すべく,日高変成帯北部の両帯が接するウェンザル林道地域の調査及び試料採取を行った.また,①の鍵となり得る日高帯かんらん岩類中の火成岩(斑れい岩)岩脈の観察・試料採取を日高変成帯南部のアポイ岳周辺の幌満かんらん岩体で実施した.加えて,日高火成活動帯の火山-深成作用を包括的に議論するため,日高火成活動帯北部地域の北見市周辺で,深成岩類と年代の重なる中新世火山岩類の採取を行った.これらの火山岩類は苦鉄質・珪長質のバイモーダルな組成で特徴づけられ,同様の組成的特徴を持つ日高火成活動帯の深成岩類との対応関係を検討するための試料となる.そのため,日高火成活動帯中部~部地域の深成岩類についても,追加的な観察・試料の拡充を行った.以上の野外調査によって得られた試料から薄片を作成し,観察を実施した.これらの新たな野外調査・試料採取に加えて,実施者らの持つ既存のデータの取りまとめと,既に公表されている既存のデータのコンパイルを行い,日高帯かんらん岩類の位置づけを含めた日高火成活動帯の中新世火山-深成作用に関する,現時点でのモデルを作成し,公表論文原稿として取りまとめを実施中である.あわせて,直接的に本研究課題の研究地域を対象としたものではないが,本研究課題遂行にあたり参考となると考えられる,同種の岩石についての岩石学的・地球化学的検討を行い,2編の論文を公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,新たな着想に基づく研究に対して予算措置がなされたため,今後の研究に必要な追加的野外観察や試料採取を実施することができた.今後,これらの試料を用いて各種分析・解析を実施していく予定である.一方,研究対象地域は日高山脈の山岳地域に位置するため,一部地域の野外調査や試料採取のためには,未舗装の林道を山奥にまで入る必要がある.2022年度は前年度の豪雨により一部の林道が崩壊して復旧の目処が立っていなかったため,十分な調査ができなかった箇所があり,これらの地域については2023年度以降の調査を予定している.他方,本研究課題の重要な論点である,日高火成活動帯の中新世火山-深成作用に関しては,早くも新たなモデルを構築することができたため,既存のデータや試料を活用することによって概ね順調に進捗しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,現在,公表論文原稿として取りまとめを実施中である日高帯かんらん岩類の位置づけを含めた日高火成活動帯の中新世火山-深成作用に関する現時点でのモデルを論文として公表し,本研究課題の作業仮説として,このモデルをより確実にするための補強的なデータの収集・解析を行っていく.また,このモデルを前提とした場合に付随的に発生する新たな疑問について,実証的なデータをもとに解決に努める.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,当初,論文として取りまとめを実施中の新たなモデルについて,米国地球物理学連合秋季大会(AGU Fall Meeting)等の学会での発表と国際的な場でのディスカッションを予定していたが,かねてからの新型コロナウィルスの感染拡大により,依然対面での発表機会がなく,外国旅費の使用がなかったため,比較的多くの次年度使用額が発生した.2023年度5月時点で,我が国においても新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症となり,海外への渡航・帰国制限が緩和されるとともに,各国においても対面での学会が標準として再開されつつあるため,次年度以降に同目的で使用予定である.また,概要に述べたように,豪雨被害により調査地域の林道が一部不通であったため,本年度の調査は若干予定よりも短縮されたため,林道復旧後,次年度使用の予定である.
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