研究課題/領域番号 |
22K03778
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
廣野 哲朗 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70371713)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 南海トラフ地震 / 断層 / 南海トラフ / 地震 / 付加体 |
研究実績の概要 |
プレート境界断層の海溝付近での大規模滑りの発生メカニズム解明とその定量的評価は、世界各地の海溝型地震の被害軽減に向けた喫緊の研究課題である。特に国内では切迫する南海トラフ地震で発生しうる津波規模の推定が求められている。そこで本研究では「深海掘削で採取された熊野沖と室戸沖および足摺沖のプレート境界断層の鉱物組成・各種物性を計測し、その上で断層滑り弱化の数値解析と動力学破壊伝播シミュレーションを実施、来たる南海トラフ地震で起こりえる海溝付近の断層滑りの3次元時空間発展の定量的評価を行う。」を目的とし、今年度は次の3つのテーマを実施した。 1)過去に実施された南海トラフの掘削プロジェクトで採取されたプレート境界からの巨大分岐断層試料の摩擦係数の報告値を用いて、動力学解析を用いた地震時の断層滑り挙動を再現した。その結果、おそらく鉱物組成に起因するわずかな摩擦係数の差が滑り量の大小などに大きな影響を与えることが判明した。 2)南海トラフは駿河湾から四国沖と広範囲に分布し、そこでの鉱物組成も大きく異なる可能性が高い。特に砂岩の含有率には差が大きいことが報告されている。そこで、山口大学設置の室内岩石摩擦試験機を使用し、砂岩の高速から低速という幅広い速度レンジでの摩擦実験を実施した。その結果、速度に依存する滑り機構の変化および摩擦係数の変化を明らかにすることが出来た。 3)プレート境界断層の実際の掘削試料が限定されるため、そのアナログとして、陸上付加体での地震性断層の調査および各種分析を実施した。その結果、高温下での岩石-水相互作用を示す特有の元素の異常が検出され、これは地震時に断層にてthermal pressurizationが発生したことを示唆する。さらに、断層におけるアルバイト化が検出され、深部流体との関係も見出しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は「深海掘削で採取された熊野沖と室戸沖および足摺沖のプレート境界断層の鉱物組成・各種物性を計測し、その上で断層滑り弱化の数値解析と動力学破壊伝播シミュレーションを実施、来たる南海トラフ地震で起こりえる海溝付近の断層滑りの3次元時空間発展の定量的評価を行う。」であり、そのうち、熊野沖のデータでの評価はほぼ終わりつつある。さらに砂質な室戸沖・足摺沖の断層を模擬した砂岩の室内摩擦実験、さらには、よりバリエーションを増やすために陸上付加体での地震性断層の分析も実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
砂質な室戸沖・足摺沖の断層の地震時の滑り挙動に焦点をあて、模擬断層の室内実験・分析を実施する予定である。さらに、熊野沖・室戸沖・足摺沖とは鉱物組成が異なる断層を陸上付加体の調査を通して、より広いバリエーションおよびその中での普遍性の探求にも注力する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室の整備に時間を要していため残高が生じたが、令和5年度には、課題研究の推進と合わせて、実験室の整備を完了させる計画である。
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