研究課題
本研究は複数の海山が沈み込む場合に生じるプレート境界周辺の変形構造と応力分布を解明することを目的としている。研究対象として、九州パラオ海嶺が沈み込む日向灘海域を扱う。地震波データ解析に基づくプレート内部構造と応力場の推定と、個別要素法を用いた数値計算による再現実験を実施し、両者の知見を統合的に解釈することで、海山沈み込み問題を検討する。初年度は、まず地震波(屈折法探査)データの解析から、九州パラオ海嶺が沈み込む領域の周辺において、上盤プレート内に鉛直方向に発達する低速度帯を多数発見した。これらは深さ10-13kmのプレート境界から海底面まで連続的につながっており、沈み込む海山によって生じる破砕帯構造と解釈できる。こうした破砕帯は流体が地殻中を移動する際の流路の役割を担っていると考えられる。地震波反射法のデータからは、低速度帯の内部で堆積層が上に凸に変形している様子も確認された。これらの結果は日向灘海域の海底面に多数の泥火山が分布していることと整合的であり、上盤内の破砕帯を通ってプレート境界もしくは地殻深部から流体が上昇してきていると推定される。一方、数値計算においては、従来から用いられてきた砂(粒子)を用いた手法を発展させ、粒子間の凝着力を実装した計算手法(岩箱数値実験)を新たに開発した。この手法を用いてプレート収束による付加体の変形実験を行い、分岐断層を含む複雑なプレート沈み込み構造の再現に成功した。これらの成果について国内外の学会で成果発表を行うとともに、国際学術誌へ論文を投稿した。
2: おおむね順調に進展している
地震波を用いた解析では、海山に起因する構造不均質が明らかとなり、その地質学的な解釈が進展した。数値計算においては、新しい手法の開発に成功し、日向灘海域を対象とした再現実験の目途が立ちつつある。いずれの項目も当初予定していた通り研究が進展している。
初年度は地震波解析と数値計算の二つの内容を並行して実施してきた。次年度は、前者で得られてきているプレート構造の知見を後者のシミュレーションに取り込むことで、より現実的な再現実験を試みる。
数値解析用PC購入のために見積もっていた予算より安価に必要スペックを満たす機器を購入できたため。次年度に繰り越す助成金はデータストレージ購入費および論文掲載料として使用する。
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