研究課題/領域番号 |
22K03796
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤原 慎一 名古屋大学, 博物館, 講師 (30571236)
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研究分担者 |
松本 涼子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 学芸員 (00710138)
田中 康平 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50841970)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 哺乳類 / 爬虫類 / 鳥類 / 餌サイズ / 卵サイズ / 運動機能 |
研究実績の概要 |
四肢動物の顎部、胸郭、骨盤がそれぞれ作るゲート構造の摂食、繁殖、運動機能の評価を行うため、研究プロジェクトに沿った複数の小テーマを同時進行で進めた。これらの成果の一部は、6月に行われる日本古生物学会で発表する予定である。 1)現生の鳥類の頭部について、26目64科85属86種の標本を用い、ゲートサイズの計測と餌サイズの比較を行った。陸上や空中で餌を処理せずに嚥下する鳥では、顎ゲートのサイズが餌サイズの上限を規定していることが示された一方、水中で餌を嚥下する鳥では平時の顎ゲートのサイズを上回る餌を呑み込んでいる場合が確認され、顎ゲートの拡張性がこれに寄与していることが示唆された。 2)現生のスズメ目及びチドリ目の鳥15科36属46種について、骨盤ゲートの三次元計測を行い、骨盤ゲートのサイズが卵サイズを反映することを示した。また、骨盤骨格の応力解析を行ったところ、骨盤ゲートの拡張に伴い体重支持機能の低下が見られないことが確認された。 3)多様な哺乳類70標本の骨盤ゲートの形状取得を行った。これらについて、多変量解析を進めた。また、爬虫類についてはこれまでに取得してきたデータをまとめ、分析用のデータセットを作成した。 4)食肉類哺乳類、鯨偶蹄類、近蹄類の顎ゲート及び胸郭ゲートの三次元形状取得を進め、食性(嚥下する餌の最大サイズ)と前肢の体重支持能力の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四肢動物類の各分類群、および各部位について、二次元・三次元骨格形状データの蓄積が順調に進められており、それらを用いた骨格ゲートサイズや骨格ゲート強度の解析が計画通りに進められている。複数の分類群および骨格部位で並行的に解析が進められているため、四肢動物全般に関する摂食機能と運動機能の関係の評価、および、繁殖機能と運動機能の関係の評価が俯瞰できている。 また、本プロジェクトの三次元形状取得用に導入したスキャナや三次元プリンタは、データの取得や解析に非常に効果的に機能している。
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今後の研究の推進方策 |
1)鳥類の顎ゲートの形状と食性の関係の解析について、さらに標本数を増やし、論文の投稿準備を進めていく。また、下顎ゲートの拡張性をもたらす要因を探るため、骨内のコラーゲン含有量と下顎形状の可変性の関係を調べていく。 2)鳥類の骨盤ゲートの機能について、分類群を拡げ、骨盤ゲートサイズと卵サイズの相関関係、および、骨盤ゲートの幅と運動機能の関係について、不変性を確かめていく。 3)哺乳類および爬虫類の骨盤ゲートについて、データの解析を進め結果をまとめていくことを中心に進める。さらに、化石種を加えて、骨盤サイズやその形態の進化傾向を探っていく。 4)哺乳類の顎ゲート及び胸郭ゲートについて、ゲートサイズの定量化、及び応力解析による強度評価を進め、結果をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
日程調整がつかず、当初予定していた骨格標本調査の一部が行えなかったこと、及び、当初予定していた学会での講演に間に合わなかったことが理由である。これらについて、今年度に標本調査や学会での講演を順次進めていく予定である。
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