研究課題/領域番号 |
22K03797
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
堀 真子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (00749963)
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研究分担者 |
井尻 暁 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (70374212)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸素安定同位体比 / 非晶質シリカ / 合成実験 / ホウ素同位体比 / 水温 / pH / 塩水 / 淡水 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度分析できなかった試料の酸素安定同位体比を分析し、非晶質シリカと水との間の同位体分別係数を求めた。得られた同位体分別係数の水温に対する傾き(-0.09‰/℃)は、先行研究で求められているオルトケイ酸と水との間の動的同位体効果と調和的であることがわかった。酸素安定同位体比を分析した試料については、赤外分光法を用いてケイ素の結合状態を調べ、酸素および水酸基との結合の比率が、続成作用を受けていない珪藻の範囲と一致することを確認した。以上のことから、非晶質シリカの酸素安定同位体比に見られる水温依存性は、水に溶存するオルトケイ酸と水との同位体交換過程に起因しており、オルトケイ酸の縮合過程には依らない可能性が示された。 また、今年度は、海水環境を模擬する目的で、塩化ナトリウム3.5%の溶媒で非晶質シリカを合成した。触媒には炭酸アンモニウムと塩化アンモニウムを使用し、pH7.9 から9.2を得た。塩化ナトリウムを含む溶媒と含まない溶媒それぞれについて、ホウ素を添加して合成した非晶質シリカのホウ素同位体比を分析し、同位体分別係数を求めた。さらに、ホウ素濃度が約1質量%になるよう添加した非晶質シリカを合成し、立命館大学の小型放射光を用いて、ホウ素の局所構造を分析した。この結果、塩化ナトリウム3.5%の溶媒で合成した非晶質シリカに含まれるホウ素は4配位に富み、塩化ナトリウムを添加しない溶媒では3配位に富むことがわかった。pHに対しては、低pH条件の試料でわずかに4配位が増える傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非晶質シリカの合成では、海水を下回るpH7.9を達成し、模擬実験として無理のない条件範囲を与えることができた。 昨年度故障していた同位体比質量分析装置が復旧し、自作の合成試料をワーキングスタンダードに用いて分析を進めている。分担者の協力の下、新しい分析ルーチンを作成し、測定時期によって生じる同位体比の校正上のゆらぎを低減しており、分析は順調である。 ホウ素の添加実験では、昨年度に続き、同位体比と局所構造に関する新しい知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
酸素同位体分別係数の水温依存性が確認できた試料について、成果をまとめる。pHや塩濃度を変化させた試料の酸素安定同位体比測定と赤外分光分析を継続する。これにより、水素イオンやナトリウムイオンの増加が、非晶質シリカの構造的特徴と同位体比に与える影響を評価する。特に、ホウ素の配位状態は塩濃度に依存する可能性が示されたことから、ホウ酸化学種の分配モデルを構築して、海水珪藻と淡水珪藻に見られる同位体分別係数の不一致の解釈に役立てる。
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