研究課題/領域番号 |
22K03798
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
江崎 洋一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60221115)
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研究分担者 |
足立 奈津子 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40608759)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カンブリア紀 / 生物多様性 / 古生代 / 放散事変 |
研究実績の概要 |
カンブリア紀後期のフロンギアン世における生物多様性の実態を解明するために,カンブリア紀中期と後期に形成された,張夏層と炒米店層(中国山東省に分布)の炭酸塩岩の組織や構造の検討を行った. 1.張夏層(主にドラミアン階)では,Epiphytonで代表される石灰質微生物類の集積によって形成される微生物岩(とくにスロンボライト)が顕著である.スロンボライト内部の隠棲空間で,サンゴ類(Cambroctoconus)が「逆さ成長」を示しながら生息している.画像解析技術を用い,原地性を保った「サンゴ類の生息様式の三次元復元」を行い,サンゴの固着様式・無性増殖様式・群体成長様式を解明した.微生物岩内での骨格生物の多様性はきわめて乏しいが,サンゴ類は特異なニッチを獲得し,個体数を飛躍的に増加させている. 2.炒米店層(フロンギアン統)の下半部では,ラミナ状の内部組織が明瞭で,円柱状コラム構造が発達した“微生物岩(ストロマトライト)”が特徴的である.コラム内では,ケラトース海綿に特有な組織からなるケラトライトも頻繁に存在する.生砕性石灰岩中では,三葉虫が豊富で,貝形虫,小型巻貝,棘皮動物,頭足類なども認められる. 3.フロンギアン世における海洋環境との比較検討のために,ケラトライトが豊富に認められる最下部トリアス系(中国広西壮族自治区に分布)の微生物岩の検討も行なった.微生物岩の大半はスロンボライトであり,ケラトライトが混在している.生砕性石灰岩中の生物構成は,三葉虫以外,炒米店層の場合と酷似している. 4.カンブリア紀後期には,海洋無酸素事変や海洋酸性化事変が関与し,石灰質微生物類の繁栄が抑制されていた.そのため,形成された微生物岩の種類が変化した.ケラトース海綿は,そのような環境下でも繁栄し,海綿に共存する微生物類の代謝活動も関与し微生物岩が形成されたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で,本研究課題を遂行するために不可欠な,北中国でのカンブリア系の野外調査を行えなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の早い時期に中国(山東省)でカンブリア系の野外調査を行う.そして,研究試料の採集・解析を行う.カンブリア紀後期と類似の現象が生じている前期トリアス紀に形成された微生物岩試料を比較検討の対象とし,生物相の検討ならびに生物多様性の解明を行う.岩石研磨面の連続的な二次元情報から,岩石組織や構造の三次元解析もあわせて進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度と5年度には,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延(出入国の規制)のために,相応の費用が必要な,北中国での野外調査を行うことができなかった.令和6年度には,中国(山東省)でカンブリア系の野外調査を行い,必要な解析を行い予算を執行する予定である.また,国内で開催される学会にも積極的に参加し,研究発表を行う.
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