研究課題/領域番号 |
22K03799
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
山口 耕生 東邦大学, 理学部, 准教授 (00359209)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リン酸 / 酸素同位体 / 地球史 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
生命の進化を考える上で、リン代謝の痕跡を地質学的試料から探ることは極めて重要である。しかしながら、有機地球化学分析に基づく有機バイオマーカーには、リン代謝の記録は残りにくいだけでなく、堆積後の続成作用や変成作用や試料採取や化学分析等の際に様々な汚染(コンタミネーション)を被りやすい(e.g., Brocks et al. 1999)という問題がある。 リン酸塩鉱物の酸素同位体組成は、リン代謝を把握するための無機バイオマーカーとして、非常に有用なツールである。リン酸塩鉱物は、形成後の同位体交換反応も極力抑えられる。上記のような「試料汚染」は受けにくいものの、分析の際に複雑で多段階の化学分離と精製が必要となるため、残念ながら普及していない。 そこで本研究では、リン酸塩の酸素同位体組成の測定法の高精度化・簡便化・迅速化を主な目的とした研究を提案する。この手法を、太古代~原生代の堆積岩掘削試料に応用することによってリン代謝の痕跡と古海水温を探り、白亜紀末の恐竜大絶滅の原因となった天体衝突の爆心地の試料に応用して生態系復活のバイオマーカーとして用いる。 上記目的を達成するため、以下の系統的な実験計画を策定した。1)従来分析法の論理的再検討に基づく改良分析法の提案; 2)各精製段階でのリン酸塩の回収率と酸素同位体組成の測定; 3)各精製段階での不純物量の定量と酸素同位体組成の測定; 4)酸素同位体組成が既知のリン酸の添加回収実験の実施; 5)標準岩石試料の繰り返し分析によるラボ用標準試料の確立; 6)実試料の分析。 本年度は、上記項目の1、2を実施することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において策定した以下の6項目の系統的な実験計画である、1)従来分析法の論理的再検討に基づく改良分析法の提案; 2)各精製段階でのリン酸塩の回収率と酸素同位体組成の測定; 3)各精製段階での不純物量の定量と酸素同位体組成の測定; 4)酸素同位体組成が既知のリン酸の添加回収実験の実施; 5)標準岩石試料の繰り返し分析によるラボ用標準試料の確立; 6)実試料の分析、のうち、項目1と2を実施できたことは、3年計画の本研究における3分の1の項目を初年度である2022年度に終えられたことになるため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において策定した以下の6項目の系統的な実験計画である、1)従来分析法の論理的再検討に基づく改良分析法の提案; 2)各精製段階でのリン酸塩の回収率と酸素同位体組成の測定; 3)各精製段階での不純物量の定量と酸素同位体組成の測定; 4)酸素同位体組成が既知のリン酸の添加回収実験の実施; 5)標準岩石試料の繰り返し分析によるラボ用標準試料の確立; 6)実試料の分析、のうち、項目3と4を中心として2023年度は実施していきたい。 項目3)の「不純物量の定量と酸素同位体組成の関係」では、精製段階でリン酸塩の沈殿への混入が予想される不純物として挙げられる、オキソ酸(SiO42–, SO42–, CO32–など)や水、水酸化物沈殿を形成する金属イオン(Fe3+, Al3+, Mg2+等)の影響を検討する。以上は、リン酸塩の沈殿の酸素同位体組成に影響を与えることから、除去するか、不純物量を定量して同位体組成への影響を定量的に明らかにする必要がある。項目4)の「添加回収実験」では、18OPO4値が既知の高純度試薬のリン酸を正確に計りとって酸溶液に添加し、同様に精製を行い、各精製段階のリン酸塩の量と酸素同位体組成を測定することにより、回収率と同位体組成を追跡する。 以上のように、研究申請書に記載した内容に従い、着実に研究を進める。そして、試料前処理過程の各段階毎の化学的な変化を追跡する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の費用が一部安価となったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額と今年度配分額は、物品の購入費、実験・研究打ち合わせ・学会発表のための旅費等に使用する予定である。
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