研究課題/領域番号 |
22K03801
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
松井 洋平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋生物環境影響研究センター), 准研究副主任 (90756199)
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研究分担者 |
阿瀬 貴博 東京大学, 大気海洋研究所, 技術職員 (20726898)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メタン / グラファイト / 鉄触媒 / 炭化鉄 / 二酸化炭素 / 放射性炭素 / グラファイト化 / 鉄炭化物 |
研究実績の概要 |
2023年度はグラファイト化用の真空ラインを用いて、メタンの直接グラファイト化の条件検討を行った。粒度や製法の異なる複数種類の鉄触媒、予備還元時の水素分圧の違い(0.5 - 1.0 atm)、予備還元温度の違い(400 - 700℃)、予備還元時間の違い(1 - 3時間)、グラファイト化温度の違い(400 - 700℃)、グラファイト化時間の違い(6 - 12時間)、異なる鉄/メタン比等、様々な条件においてグラファイト生成率の計測を行った。導入するメタン量と生成したグラファイト量を比較し、グラファイト生成量が極大になる条件の探索を行った。その結果、異なる鉄触媒ごとに反応の立ち上がり方の差があり、またそれぞれ異なる最適条件範囲があることがわかった。そのうち特にグラファイト化効率の良い鉄触媒では、既往の文献から予想されるグラファイト化の最大収率へ迫る収率で直接変換が可能であることが分かった。一部予想最大収率を越える収率でのグラファイト変換率のデータが得られたので、次年度に更に詳細に条件検討を行う予定である。 得られたグラファイト試料を実体顕微鏡および電子顕微鏡を用いて表面構造の観察を行った。グラファイト反応後の鉄触媒試料は、粒子表面の一部が一度溶融した後に再固化することにより、粒子同士が結合したような像が得られた。融合部分がグラファイトであるのか、鉄炭化物であるのか、その他の化合物であるのか今後更に詳細に分析を行う。また、電子顕微鏡に付属するEDSを用いて鉄粉上に生成したグラファイトの析出位置の分析を行った。その結果、生成したグラファイトは鉄粉上に均質に存在する場合と、分布に偏りがある場合があることが分かった。鉄粉上でのグラファイトの成長が、鉄粉の予備還元とグラファイト化の条件によって影響されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、グラファイト化真空ラインを持ちいてメタンの直接グラファイト化の条件検討(予備還元温度・時間の違い、グラファイト化温度・時間の違い等による、鉄ーグラファイト試料の炭化収率)を行った。最適な予備還元条件・グラファイト化条件の範囲を探索し、既往の文献より予想される最大収率3割に迫る収率を得ることができた。また、今後繰り返し実験による再現性の確認が必要であるが、一部の実験条件においては3割を超える収率を得ることができた。 更に、得られたグラファイト試料について、電子顕微鏡による鉄ーグラファイト試料の表面構造の観察、EDSによる元素分析を用いた炭素・鉄の分布を調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の実験では、予想される最大収率を越えてグラファイトが得られる可能性が示唆されたことから、同じ条件での繰り返し実験を行い収率の再現性を確かめる。その後、予備還元条件・グラファイト化条件等についてさらに探索範囲を広げ、より高い収率でのグラファイト化の可能性について調査を行う。それらの実験条件の中で最良の条件を用いて直接グラファイト化実験を行い、収率計測および14C分析を行う。また、同条件で得られたグラファイト試料について電子顕微鏡での観察、電子線・X線を用いた元素分析・化学状態の分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
一定量のガス導入を行うことができる治具を作成し、ガスタイトな条件で一定量の標準ガスを真空ライン内へ導入する工夫をしたことで、繰り返し実験の効率を向上することができた。その結果、当初1ポートグラファイト化ラインで実験条件を検討する予定であった項目の一部を10ポートグラファイト化ラインで実験を行うことができるようになり、鉄触媒やメタン標準ガスなどの実験消耗品代を節約することができた。上記のことから使用額の差分が生じた。次年度の使用計画として、2023年度の実験条件検討において予想外に収率の高い結果が示唆されたことから、それらの結果の再現実験および再現性の確認を行うために用いる鉄触媒、標準ガス、分析装置消耗品に使用する予定である。
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