研究課題/領域番号 |
22K03811
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
北村 貴典 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70274553)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 抵抗スポット溶接 / 継手強度 / ろう接 / 高強度化 |
研究実績の概要 |
本研究は抵抗スポット溶接とろう接を併用することによる継手の高強度化を実現した新たな接合方法を開発することである.2022年度ではろう接と抵抗スポット溶接併用した継手の引張せん断強度に及ぼす母材鋼板強度の影響を調査した.その結果として,ろう接と抵抗スポット溶接併用した継手は抵抗スポット溶接やろう接単独の場合よりも引張せん断強度が増加することを確認した.また,ろう接と抵抗スポット溶接併用した継手の引張せん断強度増加の原因は,抵抗スポット溶接部とろう接部を組み合わせたことによる複合則と,ナゲットの回転変形の抑制によるナゲット近傍への応力集中の緩和によるものと考えられることを確認した.さらに,母材鋼板強度が大きくなるほどろう接によるナゲットの回転変形抑制の効果が小さくなるため,抵抗スポット溶接のみの継手からろう接と抵抗スポット溶接併用した継手の最大荷重値の増加割合が小さくなることが判明した.また,2023年度に検討予定であるろう接と抵抗スポット溶接併用した継手の引張せん断強度向上に有効なろう材の配置(面積・方向・場所)の解明のための前段階である基礎的検討として,抵抗スポット溶接継手の引張せん断強度に及ぼす板の変形の影響を同厚・差厚の組み合わせで検討した.さらに,L字継手についても破断時の鋼板の変形に着目した強度評価を実施した.これらの研究成果は高強度化に有効なろう材の配置を検討するための基礎的知見となるものと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度はろう接と抵抗スポット溶接併用した継手の引張せん断強度に及ぼす母材鋼板強度の影響を調査することを目的とし,引張強さの異なる鋼板を使用して引張せん断試験を実施した.結果として,鋼板の引張強さが小さいほどろう接によるナゲット部の回転変形抑制効果が大きくなり,継手強度増加に寄与する割合が高いことを示した.これらの詳細な実験により,抵抗スポット溶接継手の強度に及ぼすとろう接を併用の影響のメカニズムが明らかになりつつあり,本研究の目的達成に近づいているものと考える.さらに,次年度の研究に向けて,2枚の鋼板自体の変形に注目し,高強度化に有効なろう材配置の基礎的知見について検討を開始した.以上より,研究計画に対し,現在までの進捗はおおむね順調であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究にて,抵抗スポット溶接継手の引張せん断強度に及ぼす板の変形の影響を同厚・差厚の組み合わせで検討した.さらに,L字継手についても破断時の鋼板の変形に着目した強度評価を実施した.これらの検討結果から,2枚の鋼板間の開口変位および引張軸に対するナゲットの回転変形が継手強度に影響を及ぼすことを明らかにした.そこで,2023年度ではこれらの変形の抑制に有効なろう材の配置を確立することを目的に研究を進める.以上により,ろう接と抵抗スポット溶接併用した継手の引張せん断強度向上に有効なろう材の配置(面積・方向・場所)の解明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
溶接学会への投稿論文掲載に伴う論文掲載料金が本研究計画当初の2022年度予算額を大きく上回ることが2022年度後半に判明した.そこで,2022年度は物品費を節約し,高額の物品購入は2023年度に購入するようにした.2023年度の実験計画に合わせた伸び計の導入を計画している.
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