研究課題/領域番号 |
22K03812
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
武富 紳也 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (20608096)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | き裂 / 破壊力学 / 離散構造 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
巨視き裂に対して構築された破壊力学では,き裂先端の取り扱いが長年の課題となっている.一方で,脆性き裂進展にはエネルギー要件と応力要件の双方を満足する必要がある.本研究ではまず,エネルギー要件と応力要件を同時に満足した新しい脆性き裂成長条件の定式化を試みた.両要件を満足する脆性き裂成長要件式を構築し,その妥当性について原子モデルを用いた脆性き裂成長シミュレーションと比較を行った.特にき裂先端の離散構造に起因する現象について世界中の先行研究との比較検討を進めている. また,古典破壊力学では考慮できていない,き裂先端の新生面へ吸着した異種原子と母材原子の相互作用によって生じる化学的き裂開閉口挙動についても検討を進めている.第一原理計算を用いて,表面原子間距離とエネルギーおよび垂直応力の関係を評価した.Fe(001)面について評価を行ったところ,大気中で問題となる酸素原子吸着によって表面形成エネルギーと垂直応力がともに低下することが示された.また,Fe-H系についても評価したところ,水素の表面吸着によってもき裂成長が助長されることが示された.さらに,き裂先端の塑性変形によって生み出される転位と水素の影響によって生じるき裂成長条件の変化についても検討を進めている. これらのき裂に関した研究推進によって,古典破壊力学に基づきつつも,き裂先端の影響を考慮した,新たなき裂成長に関する学術体系の深化が期待され,安全な社会の構築に貢献できると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応力要件とエネルギー要件を満足した形で,古典破壊力学に基づいて脆性き裂成長要件を表現できる簡便な定式化に成功することができた.本結果は,従来の破壊力学の枠組みの中でき裂成長に対する新しい解釈を与えることに成功しうると考えている.現在は数多くの先行研究との比較検討を進めており最終検討段階である.また,表面反応による脆性き裂成長についても実験結果と対応した,化学的反応を考慮したき裂成長助長まで具体的検討が進んでおり,おおむね順調に研究計画が遂行できていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
定式化した脆性き裂成長条件の妥当性評価を進めて論文にまとめる.また,表面吸着モデルについてはFe-Oの研究を推進する.それに伴い,大規模な分子動力学法を用いて第一原理計算では検討できない動的な挙動の評価を試みる.Fe-Hについてもき裂先端の損傷蓄積(塑性変形由来)が及ぼすき裂成長への影響評価を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度までの予備検討によって,研究計画立案時に購入を予定していたソフトウェアでは,今後の研究計画で求める精度の第一原理計算の実施が困難であることがわかった.従って,上記ソフトウェアおよび計算機の購入を見送ることとなってしまった.代替となるソフトウェアはフリーライセンスのため予算に余裕が生じた.一方で計算量の増大に伴い,現有の計算資源では十分でない状況となったため,次年度は,新たにワークステーション型計算機の購入を予定している.また,国際会議への出張旅費に充当する計画である.
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