研究課題/領域番号 |
22K03834
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
金成 守康 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (70331981)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 燃料デブリ / 微小粒 / ナノインデンテーション / 弾性率 / 硬さ / 炭化ホウ素 / ジルコニウム / 泡状構造 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1 mm以下の微小粒のナノインデンテーション(NI)試験において、試料調製、下地材料、粒内部の泡状構造などが測定に及ぼす影響を調べ、押込み挙動のメカニクスを明らかにすることである。特に、社会的インパクトが大きい燃料デブリへの応用を目指して知見を蓄積する。令和4年度は、過年度に一部実施した炭化ホウ素(B4C)模擬燃料デブリ粒に関するNI試験における試料調製法などのノウハウを用いて、1 mm以下の泡状構造を有するジルコニウム(Zr)粒についてNI試験を行った。また、Zr粒の泡状構造がNI試験で測定された弾性率等に及ぼす影響を調べるために、圧痕硬さと粒の実密度を測定した。 1 mmのZr粒は、#600研磨紙までの各研磨過程においてNI試験された。第1段階の#240研磨面において測定された弾性率は文献値より26%低く、マルテンス(HM)硬さは、圧痕硬さより15%高く、それぞれバラつきが大きかった。第3段階の#600研磨で測定された弾性率は文献値より5.5%だけ低く、HM硬さは圧痕硬さと0.9%差でよく一致した。これらの結果から、B4Cと比べて軟らかいZrの1 mm粒では、#240の平面化研磨では表面の凸凹が大きくNI試験が困難であるが、約3段階程度の研磨によって十分測定可能な表面が生成できることが分かった。また、泡状構造のZr粒の実密度は、真密度と比べて15%以上低く、粒内にある閉空孔を材料と共に押し込んだために弾性率が低く測定されたことが確認できた。 以上の研究から、圧痕観察が必要な従来の試験方法によって硬さを測定することが困難な泡状構造のZr微小粒についても、NI試験によって適正に力学的性質を測定できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究実施計画においては、放射性物質である燃料デブリは作業被曝抑制や大気放出防止の観点からホットセルやグローブボックス内で取扱う必要がある一方で、微小粒のハンドリングは著しく困難であることから、微小粒を基材へ固定して研磨する過程においてホット環境を考慮した簡便な試料調製方法を最適化しながら弾性率や硬さを適正に計測できる条件を探査することを目的とした。 微小粒をアクリル樹脂基材に埋め込む試料調製過程において、粒のガラス基板上での浮動を防止する固定剤としてポリビニルアルコール(PVA)を用いたことにより、グリスを固定剤として用いた場合に研磨過程で生じた0.5 mm粒の脱落を防止できた。その結果、NI試験用の最小な微小粒試料は、B4Cにおいては0.5 mm粒、泡状構造を有するZr粒においては磨滅の生じない1 mm粒まで調製できるようになった。 懸念されていた微小粒試料の調製方法を最適化できたことによって、B4C微小粒に加えて、泡状構造Zr粒の弾性率や硬さを簡便な研磨処理を施すことによって測定できることを確認し、当初の研究計画と比べて大きく進展することができた。 その一方で、特に実験の進展に注力した結果、当初計画において予定していた成果発表が十分できずに課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究の進展により、1 mm以下のB4C微小粒と泡状構造Zr粒それぞれの単一試料についてNI試験によって弾性率および硬さを適正に測定できることを確認できた。令和5年度以降の研究は、当初計画よりも前倒しして、約1 mmのB4C粒とZr粒を複合化して作製する試料を用いて、複合化が試料調製やNI試験に及ぼす影響を調べて燃料デブリへの応用における課題を抽出する。実際の燃料デブリは、硬さの違う材料の混合物であることから研磨性の違いが測定や試料調製に及ぼす影響と複合化された個々の材料を正確に計測するための知見およびノウハウを蓄積する。 複合化試料は、硬さが約10倍違うB4Cセラミックス粒とZr金属粒を局在化可配置させる。このため、例えば、試料調製の研磨過程において、硬いB4C粒に接触圧力が集中した結果として粒表面に加工硬化層が形成されてNI試験における測定に悪影響を及ぼす可能性がある。その対策として、測定するB4C粒とZr粒を試料中央付近に配置する一方で、これらの粒を取り囲むような外輪上にB4Cと同等の硬さを有する粒等を配置して中央付近での接触圧力を下げる必要がある。 また、すでに令和4年度の研究成果が十分にあることから、学会発表や論文投稿などの成果発表を積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
R4年度の当初研究計画においては、光学顕微鏡から画像を取得して保存するためにパーソナルコンピュータを予算計上した。研究の進展により、B4CとZrの2種類の微小粒を個別に試料調製する方法の最適化とNI試験を優先して実施したために、それぞれの粒の顕微鏡撮影をR5年度以降に行うことに伴って、コンピュータの購入をR5年度に行うこととする。
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