• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

金属・樹脂複合材の接合機構解明に資するナノ特性計測

研究課題

研究課題/領域番号 22K03838
研究機関東京大学

研究代表者

木村 文信  東京大学, 生産技術研究所, 助教 (10739311)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード金属・樹脂直接接合 / 接合メカニズム / 界面特性評価
研究実績の概要

表面に微細テクスチャが修飾された金属材を金型内に設置した状態で樹脂を射出成形することで金属材と成形樹脂が直接接合される.本研究では,接合に寄与する界面特性の評価手法の確立を目的としている.射出成形条件によって変化する界面の樹脂特性の局所的評価や,界面の微細形状の定量表現手法の開発を検討している.
前年度(2022年度)では,調査対象となる樹脂材料の選定を行い,以前より検討を続けていたPBT樹脂に加えて汎用樹脂であるPPを採用し,適切な射出成形条件の探索を行った.本年度(2023年度)は,PPとレーザー加工によってマイクロディンプルアレイが形成された金属材との接合において,樹脂が界面でマイクロディンプルにどのように侵入しているかを評価した.金属片を酸もしくはアルカリを用いて溶解することで接合界面における樹脂を露出させ(金属溶解法),その面をレーザー顕微鏡で3次元計測を行った.そして得られた3次元形状から,高さ値の出現頻度分布(ヒストグラム)を元に,機械的で高速に樹脂侵入量(マイクロディンプルに侵入した樹脂のマイクロ突起の高さ)を計算する手法を提案した.この定量評価手法で計算された樹脂侵入量と接合強度との間に大まかに相関があることを示したが,条件によっては相関が現れない場合があることも明らかにした.この結果は,樹脂のマイクロディンプル(微細テクスチャ,微細構造)への侵入量だけではなく,ほかの要素も接合に大きく寄与していることを示唆している.
加えて,流動性向上剤を添加したPA6樹脂と熱水処理を施したアルミニウム合金の接合において,界面評価のためにAFM-IRを用いたナノスケールでの化学状態評価を行った.界面近傍(特に界面から数十nm程度)でPA6中のNH基とアルミニウムの間に結合力が働くことを示唆する結果が得られ,アンカー効果以外の要素をナノスケールで確認することができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

汎用樹脂であるPPとの接合において,マイクロ構造の評価に取り組み,当初は想定していなかった手法を確立することができた.また,流動性向上剤を添加したPA6との接合においては,AFM-IRを用いたナノスケール評価を実施できた.以上から,おおむね順調に進んでいると考えている.

今後の研究の推進方策

これまでに提案してきた評価手法が,多様な種類の材料(特に樹脂材料)にも適用可能であるかを検討していく.これまでに用いていたPBTやPP,PA6に加えて,ABS,PCなどさまざまなエンプラで評価を実施していく.また,ナノスケールでの機械特性計測に関しては,計測対象の樹脂表面の粗さを可能な限り小さくすることが重要であることが初年度より確認していたため,そのようなスムーズな面の創出方法の検討を行い,ナノ機械特性計測も進めていく予定である.

次年度使用額が生じた理由

新規材料を用いていたため,新しい評価方法に取り組んだ.そのため,当初予定していた外部機関での評価(有償)を行うところまで到達しなかった.また,他の材料においては当初の予定通りの評価手法を用いたが,こちらは協力研究機関に無償で実施していただいた.以上の理由から,本年度は予定よりも必要な金額を削減することができた.
代わりに,本年度実施できなかった評価を次年度に行うことを検討するため,当初の計画よりも必要な経費が多くなることが予想される.そこで,本年度削減できた費用を次年度の経費に充足することを検討した.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Submicrometer analyses of the polymer flow modifier effects on metal?polymer direct joining2023

    • 著者名/発表者名
      Wang Shuohan、Kimura Fuminobu、Chen Weiyan、Sang Jing、Hirahara Hidetoshi、Kajihara Yusuke
    • 雑誌名

      Materials Letters

      巻: 347 ページ: 134655~134655

    • DOI

      10.1016/j.matlet.2023.134655

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 流動性向上剤を添加した6ナイロン樹脂と金属の成形接合における界面評価2023

    • 著者名/発表者名
      木村 文信、王 鑠涵、陳 偉彦、平原 英俊、桑 静、梶原 優介
    • 雑誌名

      生産研究

      巻: 75 ページ: 321~328

    • DOI

      10.11188/seisankenkyu.75.321

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Induction heating direct joining of carbon fiber reinforced thermoplastic and galvanized steel with hot water treatment2023

    • 著者名/発表者名
      Weiyan Chen, Fuminobu Kimura, and Yusuke Kajihara
    • 学会等名
      38th International Conference of the Polymer Processing Society
  • [学会発表] Sub-micrometer scale cross-sectional analyses of the polymer flow modifier effects on metal-polymer injection molded direct joining2023

    • 著者名/発表者名
      Shuohan Wang, Fuminobu Kimura, Eiji Yamaguchi, Yuuka Ito, Yukinori Suzuki, Jing Sang, Hidetoshi Hirahara and Yusuke Kajihara
    • 学会等名
      38th International Conference of the Polymer Processing Society
  • [学会発表] Injection molded direct joining of steel and polybutylene terephthalate via a hybrid surface treatment method2023

    • 著者名/発表者名
      Weiyan Chen, Fuminobu Kimura, and Yusuke Kajihara
    • 学会等名
      76th IIW ANNUAL ASSEMBLY & INTERNATIONAL CONFERENCE ON WELDING AND JOINING
  • [学会発表] Heating Process Effects before Hot Water Treatment in Injection Molding Direct Joining2023

    • 著者名/発表者名
      Shuohan Wang, Zhongqi Cui, Fuminobu Kimura, and Yusuke Kajihara
    • 学会等名
      The 10th International Conference of Asian Society for Precision Engineering and Nanotechnology

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi