研究課題/領域番号 |
22K03861
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川久保 英樹 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90579129)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 磁気援用加工 / 仕上げ面性状 / 電解水 / 砥粒 |
研究実績の概要 |
磁気粒子ブラシによる物理的な除去加工と,加工液による化学的な除去加工との,複合的な表面加工技術の加工メカニズムを検討した.2023年度では,パイプ内面加工における加工面性状と加工面の元素分析を行い,加工メカニズムの解明を試みた.ここでは,磁気粒子ブラシを構成する強磁性材粒子(不定形/球形)と,加工液である電解水(還元水/酸化水)との4通りの組み合わせを比較した.更に,表面粗さの向上を目的として,球形粒子と電解酸化水との組み合わせにおける粒子サイズと表面粗さとの関係について検討した.得られた成果は次のようになる. (A)加工面性状と加工面の元素分析:(実験条件:強磁性材粒子は不定形(中央値505μm)と球形(中央値567.5μm)を用いた.加工液はNaCl電解還元水(pH12)とNaCl電解酸化水(pH2)を用いた.)(1)4通りの実験条件のうち,球形粒子と電解酸化水との組み合わせにおいて表面粗さが向上し,加工面も最も平滑化される.SEM観察像からは,磁気粒子ブラシのわずかな加工条痕(物理的な除去加工)が確認された.他の3条件は粗面化される.(2)電解酸化水を用いた場合,酸素元素量は加工前と比較して変化がない.一方,電解還元水を用いた場合,酸素元素量が加工前と比較してわずかに増加する. (B)球形粒子と電解酸化水との組み合わせにおける粒子サイズと表面粗さ:(実験条件:球形粒子のサイズは,中央値260μm,567.5μm,1000μmの3種類である.)(1)粒子サイズが大きい方が,表面粗さの値は小さくなる.(2)強磁性材粒子の硬度を低くすると表面粗さの値が小さくなる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,磁気粒子ブラシを構成する強磁性材粒子(不定形/球形)と,加工液である電解水(還元水/酸化水)とを組み合わせた4通りの加工条件について,加工面の元素分析を行い,化学的加工に関する加工前後の状態を検討した.特に,加工液に電解酸化水を用いた場合,加工面の元素状態について加工前後の変化がないことを明らかにした.同時に,物理的加工に関する検討も行い,複合的に加工が進展していることを確認した. 以上から,4通りの加工条件のうち,球形粒子と電解酸化水との組み合わせが,砥粒レス状態における加工面の平滑化には適していることを明らかにした.この加工現象は,砥粒レス加工において重要な実験結果であり,砥粒残渣がない高品位加工面の創製技術としての優位性がある.
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今後の研究の推進方策 |
砥粒レス状態での表面粗さの向上の加工メカニズムを解明するため,球形粒子と電解酸化水との組み合わせによる実験を進める.これまでに,粒子サイズが大きい方が,表面粗さの値は小さくなる傾向が確認されており,更に詳細を検討する.また,強磁性材粒子の硬度を低くすると表面粗さの値が小さくなる傾向がみられることから,強磁性材粒子の硬度を変化させた実験についても検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)次年度使用額が生じた理由:当初,実験装置の試作を計画していたが,予算額を考慮しながら実験装置製作の見直しが必要になったためである. (2)使用計画:実験装置の改良費用として使用する.
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