研究課題/領域番号 |
22K03867
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
古谷 克司 豊田工業大学, 工学部, 教授 (00238685)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 切断 / 砥粒加工 / ソーワイヤ / 岩石 / 真空 / 月・惑星探査 / その場観察 / ニッケル |
研究実績の概要 |
太陽系,地球および月の起源や進化を解明するためにさまざまな科学探査が行われている.そのためには,月環境で使用可能な岩石加工装置が必須となる.月は火星よりも環境が厳しく,気圧が10^-6~10^-10Pa,最高温度が120℃程度であるため,機械装置には耐熱性や潤滑の問題が常に付きまとう.そこで本研究では,真空中で岩石を研磨し平滑加工する方法を確立することを目的とする.これまでに様々な真空対応岩石加工機を試作した結果,ダイヤモンドソーワイヤと砥石による加工が有力であることが明らかになっている.そこで,試作する装置では,両者の利点を活かす. 真空中でソーワイヤを用いて岩石を切断する場合には,ダイヤモンド砥粒をソーワイヤ心線に固定するためのニッケル電着層が岩石表面に付着し,加工速度が低下する.この特性を考察するために,真空中で摩擦試験の解析結果をまとめた.その結果では,雰囲気の圧力自体ではなく,酸素によるニッケルの酸化の影響が大きいことが明らかになった.また,ソーワイヤがしゅう動する岩石面にいったんニッケルが付着した場合には一時的に摩耗粉が発生するが,再付着することでニッケルの付着面が摩耗しなかったのと同様な状態が維持される.しかしソーワイヤが振動した場合には,摩耗粉の排出が促進され,再付着しにくくなるため加工が進んでいると推測される. ロボットのエンドエフェクタとして用いることができるよう,小型,軽量化した装置を試作中である.加工力を測定する部分と,それを外部へ通信する部分がほぼ完成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真空中,大気中,アルゴン雰囲気中の摩擦試験結果を解析することにより,雰囲気の圧力よりも酸素がないことと,ソーワイヤが常に接触して摩耗粉の排出が悪くなることが除去量を低下させる原因であることを明らかにした.また,試作機の開発も継続している.したがって,おおむね順調に進展していると考えている
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今後の研究の推進方策 |
2024年度前半は現在試作中の装置のプロトタイプを完成させることを目指す予定である.加工実験の自由度を上げるために,300mm角程度に収まる寸法で,1kg以内の質量にすることを目標としている.後半には加工実験を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカで開催される精密工学に関する国際会議で発表することも検討していた.しかし,国内で月面活動に関する国際ワークショップが開催されたので,分野の適合性を考慮してそちらで発表した.そのため,海外出張用として見込んでいた額から支出が大幅に減った.2024年度はアメリカで開催される加工関係の国際シンポジウムで1件発表することになっている.試作機の開発および実験が本格化するので,適正に消費する予定である.
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