研究課題/領域番号 |
22K03881
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
風間 俊治 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (20211154)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バルブ / 温度 / 液体 / 物性値 / フルードパワー |
研究実績の概要 |
上下水道はもとより様々な工場やプラントからフルードパワーシステムなどまでの配管系には、数多のバルブが使用されている。バルブの主な機能は、流量、方向、圧力の制御といえる。それを実現させるためには、流路の開閉や断面積の変化が求められる。基本的には固体弁体の動作を要することになり、接触を伴う摺動部において微少ながらも必然的に摩耗が発生する。また、液体の場合は流路の縮流部において、しばしばキャビテーションが惹き起こされる。前者に基因する摩耗粉ならびに後者に起因する壊食粉は、流体に混入する。これらは、高精度装置内における液体純度低下、隙間部への噛み込み、ひいては生産・製造ラインにおける漏れや故障をはじめとするトラブルの重大要因となる。ひとつの対応としては、摺動する可動部品を設けず、特殊な液体を用いない方法が思いつく。そこで、固体の弁体を持たない、新たな着想によるバルブを開発することを目的として本研究をスタートさせた。 研究内容のコアは、液体用制御弁を摺動部を設けずに実現することにある。本取組みでは、流路を局部的に冷却・加熱することにより、条件によっては止水までをも含めて、流れを制御するバルブの開発研究を3年間で目指す計画を立案した。第1年度は、供試バルブの設計・製作、温度制御下の流量計測などをはじめ、現象確認と予備実験を計画した。試験装置を製作するに当たり、冷熱プレートとその制御装置およびセンサ類、ならびに各種部品の選定と手配等を行うこととした。第2年度は、流速や圧力、液温や液種などをパラメータとした試行実験を重ね、課題や問題点を洗い出しつつ検証を深めるとともに、理論的な検討を進める計画を組んだ。最終年度となる第3年度は、実験結果と理論計算との比較を行いつつ実験と理論の両面からこの仮説を実証することを目標として、当該年度の後半には全体を通した考察を行い、本研究を総括する予定とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年度は、主に供試バルブの設計・製作を進めた。なお、本研究をスタートするに際して、試験装置や計測器類の準備ならびに安全性や着実性をあらためて検討した。その結果、供試液体として、水道水を対象とする実験から着手することとした。 試験装置を製作するに当たり、冷熱プレートとその制御装置およびセンサ類とその計測装置ならびに各種部品の設計ならびに選定を行った。タンク、管路、供試バルブ、制御バルブ、流量計、温度計、圧力計などにより構成する試作第1号機を完成させた。事前検査や動作確認ならびに試運転や安全点検を十分に経た上で、予備実験により実施可能なヘッドや流量あるいは制御温度範囲などの条件を試行錯誤的に求めた。そこで得られたデータに基づき、流量を主なパラメータとして、凝固停止までの冷却時間および流動再開までの加熱時間などの計測を実施した。更に、流路の影響も評価するために、寸法などが異なる計3種類の供試バルブを準備して、その差異を実験的に検討した。 初年度の主な成果としては、供試バルブをプロトタイプの段階ではあるが完成させたこと、水道水を用いた実験により供試バルブの冷却と加熱により流れの停止と流出を実現したこと、これらの結果から弁体を有しない機構でバルブ作用を実現できることを実験的に確認した。 以上の進捗状況等に基づき、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
第1年度に、私家版の供試バルブに水道水を流した条件下において、供試バルブの冷却と加熱により流れの停止と始動を、つまりバルブとしての閉と開の動作を確認することができた。初年度に得ることができた、この検証結果により、本提案の実現性ならびに本研究の継続の必要性が示されたと考えられる。 第2年度は、液体の種類を水道水から作動油に変更することで、多様な液体に対するバルブ作用の有効性について吟味する予定である。なお、水道水では氷点下で凝固する相変化の現象を利用した一方で、温度による粘度の変化が齎す流量の変化は明確に把握できなかった。対照的に、作動油では液相から固相への変化は望めない一方で、温度の低下に伴う粘度の増加に基づく流動抵抗の変化を期待できる。こうした考えに基づいて、実験の条件や方法を再検討しつつ本研究を進める計画である。当然のことながら、両液体の混合は回避すべきこと、ならびに液体物性の大きな差異により、寸法や材料の変更を余儀なくされる可能性が高いことから、作動油用の試験装置は水道水用の装置とは分けて、新たに設計、試作する。他方、液体の種類によるバルブの制御性ならびに温度変化が及ぼす効果の比較なども検討すべき事項であることから、基本的な寸法や形状等は相互に合わせることを念頭におく。また、理論的なアプローチも並行して進める計画である。 最終年度となる第3年度には、それまでに得られた実験結果を振り返り、必要に応じて追実験を行いつつ、実験結果と数値計算等との比較を通して、実験と理論の両面からこの仮説を実証するとともに全体を総括する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由としては、供試バルブの設計や実験条件の設定に模索を繰り返し、一部、当初の計画に対する再検討ならびに軽微な変更等を行いつつ、試行錯誤的に進めたためである。当該経費については、次年度の部品や機器の整備等に充てることで、本実験の遂行に有効的に活用するとともに本研究の成果に生かすように努める。
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